酒と小説

 ラテンアメリカの小説の旅は続いていて、今はガルシア=マルケスの「コレラの時代の愛」を読んでいる。

 ひとつ発見したのだが、小説をその土地の酒を飲みながら読むと、ムードが出て楽しい。

 きっかけは、メキシコを舞台にしたボラーニョの「野生の探偵たち」を読んだことだ。

 

 

 

 小説の中にメスカルという酒が出てきて、調べてみると、テキーラに似た酒であるらしい。ちょっと興味を持って近くの洋酒屋で探したのだが、なかった。代わりにテキーラを買ってきた。

 おれは、小説を読んでるとき、日常生活の中でもなんとなくそのムードが続く。テキーラを飲むと、「野生の探偵たち」のムードが深まる感じがした。

 続いて、ガルシア=マルケスの「コレラの時代の愛」を読み始めた。コロンビア出身の作家で、コロンビアが舞台の小説だから、コロンビアの酒を探してみると、アグアルディエンテという酒があった。通販で取り寄せた。

 飲むと、甘い(サトウキビが原料だそうだ)。飲みながら「コレラの時代の愛」を読むと、アルシア=マルケスの小説の濃密な感じに合って、心地がよくなった(まあ、おれは酒を飲むとたいがい心地がよくなるんだが)。

 小説を読むとき、舞台となる酒を飲みながら、というのはなかなか気分が高まってよいかもしれない。

 たとえば、マルセル・プルーストを読みながら、ワインかブランデーを飲む(読んだことないけど)。フォークナーを読みながら、バーボンを飲む(読んだことないけど)。チャンドラーを読みながら、スコッチを飲む(読んだのは随分昔だけど)。谷崎潤一郎を読みながら、日本酒を飲む。少なくとも後の2つは間違いなく合いそうだ。

 もっとも、カフカを読みながらアブサンを飲んだり、ドストエフスキーを読みながらウォッカを飲むと悪酔いしそうだ。まあ、カフカドストエフスキーは小説自体が悪酔いみたいなものではあるけど。

 お酒が好きな方にはおすすめである。