平八になりたい

 ひさしぶりに黒澤明監督の「七人の侍」を見た。もう何度も見ているし、ちょっと飽きているところもあるのだけれど、それでも見ると引き込まれるし、面白いと思う。

 

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 七人の侍の誰になりたいか、という質問をすると、その人の性格や目指しているところがわかりそうだ。七人の簡単な紹介をすると、以下の通り。

勘兵衛 指揮官。リーダーシップに非常に優れており、普段はものやわらかだが、ビシッと締めるところは締める。年をとっているので前線には立たないが、武芸の腕も高いらしい。情にも厚い。

五郎兵衛 副官格。勘兵衛のよい相談相手。戦術眼がある。穏やかな性格で声を荒げるということがほとんどない。実は弓の名手。

久蔵 剣を極めるということに凝り固まったような男。一見クールなようだが、優しいところもある。

七郎次 勘兵衛の「古女房」。かなりの合戦をくぐり抜けてきた強者。元気がよく、百姓たちを常に鼓舞する。槍が得意。

平八 剽軽者。いつも冗談や皮肉を言っている。剣の腕は大したことがないらしく、五郎兵衛いわく「中の下」。

菊千代 荒くれ者。元は百姓の生まれで、どこか侍達に馴染めないでいるらしい。武芸の腕はないが、強引に力で相手を叩きのめすイメージ。本人の意志とは関係なく、侍たちと百姓たちをつなぎ合わせる役を担っている。

勝四郎 武者修行に出たばかりの若者。結構いい家の出らしい。武芸の腕はわからない。戦は初体験。みんなに可愛がられている。

 とまあ、そんなところだ。よくできたメンバー構成だと思う。

 おれがどの侍になりたいかというと、平八だ。

 武芸は大してできないで、冗談ばかり言っている。そういう設定だと、いざというとき、逃げ出しそうなキャラクターに思えるが、実は勇気がある。

 野武士の山寨に夜討ちをかけるメンバーを勘兵衛が募るシーン。平八は久蔵とともにすっくと立ち上がる。その何気ない仕草が実にカッコいい。千秋実、名演だ。

 山寨で、かつての女房を見かけた利吉が思わず追いかけると、平八は助けに飛び出す。クーッ、カッコいいぜ。武芸ができなくても勇気があれば、人を感動させられるのだ。

 結果、野武士の火縄銃で撃たれ、平八は死ぬ。七人の侍の中の最初の犠牲者になる。

 剽軽者だが、やるときはやる。情があって、使命感もある。おれは平八になりたい。