日本共産党の綱領を読む

 全然知らなかったのだが、日本共産党が昨年(2020年)の1月に綱領を16年ぶりに改定したんだそうだ。

 おれはもう10年以上前だと思うが、日本共産党の綱領(前のやつ)を読んで、その大時代的な内容に驚愕した覚えがある。今回はどうだろう。早速、日本共産党のサイトに見に行ってみた。

 面白いと思ったところをテキトーに抜書きする。

日本独占資本主義は、戦後の情勢のもとで、対米従属的な国家独占資本主義として発展し、国民総生産では、早い時期にすべてのヨーロッパ諸国を抜き、アメリカに次ぐ地位に到達するまでになった。その中心をなす少数の大企業は、大きな富をその手に集中して、巨大化と多国籍企業化の道を進むとともに、日本政府をその強い影響のもとに置き、国家機構の全体を自分たちの階級的利益の実現のために最大限に活用してきた。国内的には、大企業・財界が、アメリカの対日支配と結びついて、日本と国民を支配する中心勢力の地位を占めている。

 出ました。 国家独占資本主義。共産党の名文句である。できれば、志位さんに歌舞伎の格好をして、「アッ、国家独占資本シュギーッ!」と決めてもらいたい(大向こうから「独占屋ッ!」「カイキュートーソーッ!」などと声がかかるともっと楽しい)。

 おれはユネスコ無形文化遺産に登録すべきなのは、お神楽や文楽なんかではなくて、日本共産党じゃないかと思う。

 それにしても、おれには少数の大企業が日本政府をその強い影響のもとに置いているようには特に思えいないし、「階級的利益の実現」の階級って、今の時代、何を指しているのだろうか。労働者さんと、社長さん、株主さん、投資家さん(生命保険をかけている人は生命保険会社を通じて投資家さんである)だろうか。課長さんはどの階級なのだろうか。

 「大企業・財界が、アメリカの対日支配と結びついて、日本と国民を支配する中心勢力の地位を占めている」。おれは初めて知った。不徳の致すところである。

 毎度思うのだが、マルクス主義というのは一度ハマるとよほど磁力が強いのだろう。あらかじめ存在する論、あるいは論理のフレームワークに現実を無理やり当てはめたくなるらしい。それはマルクス主義の悪癖だとおれは思っている。上でいうと、「独占資本主義」「階級的利益」なんていうところ。まあ、部分的には「確かにそうだ」というところがあったとしても、一面的だからいろんな要素を取りこぼしてしまうし、その結果、施策がかえってまずい結果に陥ったりする。特に人間の心の動きというものをまったく顧みないのがよくないところだ。

 ソ連の話。

レーニン死後、スターリンをはじめとする歴代指導部は、社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義専制主義の道を進んだ。「社会主義」の看板を掲げておこなわれただけに、これらの誤りが世界の平和と社会進歩の運動に与えた否定的影響は、とりわけ重大であった。 

  ソ連と一緒にされていろいろ迷惑を被ってきたという気持ちが強いのだろう、日本共産党は。被害者意識が滲み出ている。

民主主義的な変革は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人びとを結集した統一戦線によって、実現される。統一戦線は、反動的党派とたたかいながら、民主的党派、各分野の諸団体、民主的な人びととの共同と団結をかためることによってつくりあげられ、成長・発展する。当面のさしせまった任務にもとづく共同と団結は、世界観や歴史観、宗教的信条の違いをこえて、推進されなければならない。

 日本共産党は好きだよなあ、統一戦線。 統一して戦うイメージが好きなのだろう。「当面のさしせまった任務にもとづく共同と団結は、世界観や歴史観、宗教的信条の違いをこえて、推進されなければならない。」って、その任務は誰が定めるのだろう。「世界観や歴史観、宗教的信条の違いをこえた共同と団結」なんて裏を返せば全体主義、統制主義じゃん。

 そして、やっぱり最後に出ました。生産手段の社会化。

 生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困をなくすとともに、労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす。

 生産手段の社会化は、生産と経済の推進力を資本の利潤追求から社会および社会の構成員の物質的精神的な生活の発展に移し、経済の計画的な運営によって、くりかえしの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする。

 生産手段の社会化は、経済を利潤第一主義の狭い枠組みから解放することによって、人間社会を支える物質的生産力の新たな飛躍的な発展の条件をつくりだす。

 ・・・わけないじゃん。この人たちはそれこそソ連邦や1980年代以前の東ヨーロッパをどうみてきたのだろうか。生産手段の社会化なんて、凄まじい官僚主義、中央集権になって、リーダー層(という階級?)のもと、多くの人がそれこそ奴隷労働になるのが目に見えてるじゃん。やる気なしの陰気なダラダラ仕事。ヤダネ。ゴメンコームルヨ!

 いやー、ひさしぶりに綱領読んで、お腹いっぱいです。もう結構です。