方言の行き来

 知ったのは割と最近だが、大阪の漫才コンビの金属バットが好きで、YouTubeなんかでよく見る。三十代半ばで、頭を剃り上げた巨体の小林とロン毛の友保(ともやす)のコンビで、見た目は癖が強いが、正統派のしゃべくり漫才で、話術と言葉のセンスが素晴らしくいい。興味を持った方は適当に検索してご覧いただきたい。

 友保のほうは「〜してまんねん」「〜んとちゃいまっかの」などと大阪の古い芸人言葉を(おそらく意識して)使う。一方の小林も「おれサ、〜してサ」と、大阪弁の中に「サ」を入れる。小林も友保も大阪・堺の出身だそうだが、南関東特有の語尾「サ」が入るのがちょっと不思議である。

 言葉というのはいろいろと変わったり、伝染したりするものなのだなあ、と思う。特にテレビやネットの動画で話し言葉が大量に行き来する時代だから、各地の言葉が入り時混じるのも当然かもしれない。東京でも、もっぱら大阪のお笑いからの影響で、「ちゃうて」とか、「なんやねん」などの言葉が日常的にも用いられるようになってきた。

 今の東京言葉の特徴である「〜じゃん」という語尾はもともと横浜あたりのものだったらしい。「かったるい」「うっちゃっとく」などもそうらしく、どういう経緯で東京に広がったのだろうか。ヤザワの影響か(永ちゃんが広島から出てきて、東京に行くつもりがふらっと横浜で降りて住み着いたのは有名な話)。まあ、矢沢永吉に限らず、ジャズ、ロックに横浜出身のミュージシャンは多いので、そこからテレビなどに流れたのかもしれない。

 言葉の変化というのは面白いものだと思う。伝染するのはウィルスばかりでないのだ。