Jリーグ四百年構想

 おれはプレミアリーグのサッカーが好きで、特にリヴァプール戦をよく見る。

 プレミアリーグはもちろん、選手たちやチームプレーも素晴らしいのだが、スタジアムの雰囲気、盛り上がり方も素晴らしい。自分の街のチームを後押しする(成績が酷い時は罵倒もするのだが)空気がスタジアム中を支配している。

 Jリーグについてはあまりよく知らないのだが、おそらく同じ方向で、街を代表するクラブをつくることをビジョンにしているのだと思う。

 もちろん、それはよい。ただ、日本はイギリス(あるいは、もう少し広くヨーロッパ)と比べると、都市同士の対抗意識がそれほど強くないように思う。日本のダービーマッチはヨーロッパサッカーを真似して、後からやや人工的に作り出したものだろう。

 それで思ったのだが、思い切ってクラブチームは街(市町村)ではなく、江戸時代の藩ごとに結成してはどうか。

 日本に藩があったのはもう百五十年以上も前の話だが、それでもその土地の人の潜在意識になんとなく残っている。

 たとえば、おれは富山市で生まれ育った。富山市はもともと富山藩十万石で、加賀百万石の支藩だった。加賀が本家、富山が分家(の分際)である。富山県の中でも富山市だけが富山藩で、あとは加賀藩だった。だから、富山市出身の人間にはなんとなく金沢にはかなわん、と思っているところがある。ちょっとコンプレックスがある。

 それでもって、それぞれのクラブチーム、富山藩バイヤクーズ対加賀藩ヒャクマンゴクーが試合をすれば、「お前らは薬だけ作ってろ!」などと加賀友禅をひらひらさせながら応援する加賀藩に対して、「くっ!」と分家、小藩の悲しさで言葉を飲み込んだりして、それが試合の進展にしたがって、怨念となって爆発するのだ。

 もちろん、江戸時代には大藩もあれば、小藩もあった。小藩だと財政規模は小さいからチームはどうしても小粒になる。肥後・熊本藩五十四万石対信濃飯山藩二万石というのは飯山藩からすると、なかなかに厳しい。しかし、だからこそジャイアントキリングの醍醐味もあるわけだ。

 この藩対抗で天皇杯(あるいはいっそ将軍杯とでもするか)を戦ってごらんよ。盛り上がるよー。それでもって、決勝が薩摩藩会津藩なんかになったら、幕末以来の怨念が爆発して、新国立競技場は粉砕されてしまうかもしれない。知らんけど。