シモの話で恐縮だが、大をした後の尻の処理の仕方には世界に大きくふたつの流儀がある。紙で拭く派と水で洗う派だ。
紙で拭く派はトイレットペーパーが主だが、昔の日本では落とし紙と呼ばれるものを使っていた。おれもほんの小さい頃には薄いちり紙状のものを使った記憶がある。いつの頃からか、ロール状のトイレットペーパーが入るようになった。もしおれの家基準で考えるなら、日本でトイレットペーパーが普及したのは半世紀かそこらということになる(うちは地方だったので、大都市ではもっと早かったかもしれない)。欧米、東アジアはもっぱら紙で拭く派である。
一方の水で洗う派はインドが代表的で、トイレットペーパーもないことはないが、頼むといかにも「不潔だ」という顔をして渡されると聞いたことがある(おれは行ったことがない)。もっぱら水を使って左手で洗うという。アラブ方面も水で洗う派で(乾燥地帯なのにどういうことだろうか)、ホテルのトイレには尻を洗うためのシャワーがあるらしい。
水で洗う派が紙で拭く派を不潔に感じるのは何となくわかる。紙で拭いたってきちんと取れないだろう、きったねー。ということなんだろう。
日本は紙で拭く派だが、シャワートイレ(いわゆるウォシュレット。ただし、ウォシュレットはTOTOの商標)が普及して、水で洗う派に転換しつつある。おれも大学の頃から家ではシャワートイレを使うようになって、考えようによっては尻の処理についてはインド〜アラブ派になったといえる。
シャワートイレというのは実に偉大であって、発明は確か日本ではないが、改良・普及させたのは日本である。ノズルが出てきて、ピンポイントに尻の要点を狙う、しかも返り討ちに合わないというのはなかなか微妙な設計とコントロールが必要で、実によくできている。日本は武士道を誇るよりシャワートイレを誇ったほうがいいんではないか。
おれはシャワートイレで尻を洗うたびに、「おもてなしだ!」と叫んでしまう。嘘である。
しかし、偉大なはずのシャワートイレがなぜか世界ではあまり普及していないらしい。中国では一種のステータスとして喜ばれているという話もあるが、尻のOMOTENASHIは今いち理解されないのであろうか。
新国立便座競技場。シャワートイレ機構をつけたくなる。