老いと霊長類

 昨日、電車の席に座って、ぼんやりと向かいの席に並ぶ人々を見ていて、ふと思った。「人間は年をとると、だんだん顔がサル化していくなー」。
 サル化というか、霊長類化(ただし、人類を除く。以下、同じ)と言ってもよい。これはほぼ間違いなくそうである。まあ、中には若年の頃から霊長類的な顔立ちの人もいるが、それは置いておく。おおむね年をとるにつれ、人の顔は、チンパンジー、オランウータン、ゴリラとタイプはいろいろであっても、霊長類のどれかに似てくる(昔、「猿の惑星」という映画シリーズがあったけれども、あれがヒットしたのは霊長類の顔がそこらへんで見る人のジジババの顔に似ていて、リアリティがあったからではないか)。
 これはなかなかに不思議なことである。なぜ人の顔は年をとると霊長類化してくるのか。ひとつには顔のシワが目立ってくるからだろうが、逆に考えると、人間の若者の顔はなぜシワが少ないのだろうか。そこに何か進化論的な意味合いがあるのか、それともたまたまだろうか。
 もうひとつ感じるのは、人は年をとるにつれ、顔立ちがはっきりしてくるということだ。「目鼻のはっきりした」という表現は割と美男美女を連想させるけれども、文字通りの「目鼻のはっきりした」顔は年寄りのほうが多い。嘘だと思ったら、道行く年寄りと若者の顔を比べてみるといい。
 逆に言うと、人間の若者の顔は年寄りに比べると、のっぺりしているということである。窪みなどの段差が少ない。他の霊長類に比べてなぜそうなのか。なかなか興味深いテーマだが、例によって徹底した探究心というものにおれは欠けるので、おそらくこれ以上は追求しないだろう。誰か、代わりに追求してくれ。