ゴジラの声

 今日はバッチイ話。
 酒を飲んだ翌朝、歯を磨くと、やたらとえずく。特に年を取ってからひどくなった。胃の回復力が落ちているのかもしれない。自分でもどうかと思うような凄まじい声が出て、その音はもはや文字では書き表せないほどである。
 今朝も凄まじい声、というより音が出た。そうして「これは何かに似ているな?」と感じ、すぐに思い当たった。ゴジラの声である。
 ご存知の通り、ゴジラの声というのもちょっと文字では書き表せない複雑な音構成である。あれは何のために声をあげているのであろうか。
 動物が鳴くのは、よく知らないが、威嚇か、求愛か、あるいは喜び、悲しみ、痛みといったときであろうか。ゴジラの場合、おそらく求愛ではあるまい。威嚇というのが真っ当な意見だろうが、おれはここであえて「あれはえずいているのだ」と考えてみたい。要するに、ゲロを吐きかかっているのである。口から放射能をまき散らすのだ。ゲロを吐きたくなってもおかしくないではないか。
 確か、第一作目の「ゴジラ」で、ゴジラがどこだかの島に現れる直前、海が全くの不漁になったというエピソードがあったと思う。してみれば、ゴジラは魚を食っているわけである。
 そして、ゴジラが東京に上陸する。彼は気持ち悪くなっている。ちょうど飲んだ翌朝の歯磨きのときのようにだ。体内から急にこみ上げてくるものがある。ゴジラが例の複雑なえずく声をあげる。そうして、次の瞬間、口から、半ば消化された腐った魚がドバドバドバ。
 おれは今、自分で書いたことに自分で気持ち悪くなっている。そうして、例のゴジラのようなえずき声をあげている。