街と橋

 相変わらず土日は自転車で走り回っていて、土日合わせて十時間くらい乗っていることもある。無駄なエネルギーの使い方と言えないこともないが、そんなこと言い出せばおれの場合、生きていること自体が無駄のようなものだから問題ない。
 昔は江戸八百八町に大阪八百八橋と言ったそうだが、東京も意外と橋が多い。埋め立て地が多く、地区と地区の間を橋でつないでいるからだろう。
 おれは橋が好きで、生まれ変わるなら鉄橋に生まれたいくらいである・・・というのは今勢いで書いただけだが、橋が好きなのは本当である。今一番気に入っているのは新川と佃を結ぶ中央大橋で、美しい吊り橋である。大橋というくせに片側一車線で、しかし歩道部分は広い。バブルの頃に計画されたそうで、交通量(経済的重要度)の割には贅沢な感じである。橋の名前は知らないが、京橋のほうから中央大橋に行く途中に短い鉄橋があって、ここもいい風情である。
 時代の経っているところでは、月並みだが、勝鬨橋もやはりいい。石造りの監視所の感じとか、やや錆の出かかった鉄橋の具合とか、素敵である。
 全般に、隅田川にはいい橋が多い。また、橋によってデザインが全然違うので、自転車で走っていて楽しめる。
 考えてみれば、おれの好きな街はどこもいい川といい橋がある。京都は鴨川、大阪のミナミは道頓堀川、金沢は犀川浅野川。いずれもいい橋がかかっている。デザインとしてどうということのない橋でも風情がある。金沢の犀川大橋なんて一見実用一点張りの鉄橋のようだけれども、何かいい。
 卑下するわけではないが、おれの生まれ育った富山市にも川が流れているが、あまり印象に残る橋はない。
 橋は橋自体で成立するというよりも、そこを行き交う人の数で磨かれる感じがする。街の歴史なのか文化なのか。