天然素材と人工物

 前回、「天然素材、天然成分とアピールする商品が多いけど、だから何なんだ」というようなことを書いた。天然だから体にやさしいと言えるわけではないし、人工的化学合成だから危険というわけでもない(NaClは天然でも化学合成でもNaClだろう。「塩」となるとまたいろいろあるんだろうけど)。

 まあしかし、天然方面については人間が長年かけて使用法や効果効能、あるいは害を取り去る方法を調べてきたということはある。経験主義的にいろいろ明らかにしてきたので、その分、安心ということはあると思う。いわば、何百年、何千年と人体実験を行ってきた成果、というのは無視できない。

 人工的化学合成物で、手法が発見されてから時間があまり経っていないものについては、効果効能はまだしも害になる部分がわかっていないというところもあると思う。人工的化学合成物はもっぱら人間の頭の働きから出てきたもので、人間の頭の働き(理屈)というのは限界があるから、思いもかけない副作用が出てくる場合もあるのだろう。

 一方で、天然物のほうについては、「思い込み」の作用みたいなものもあって、しょせん人間は、たとえば、血液型と性格の関連なんかにしても「あ、言えてる」と一度思い込みだしたら、そんなふうに以後も思えてしまう。プラシーボ効果というのはまたちょっと違うかな。ともあれ、人間の感じ方にはそう思えばそういうふうに感じてしまう、というようないい加減な部分もあり、経験主義的なものが全て終局的には正しい、というわけでもない。

 何が言いたいのか自分でも整理がつかなくなってきたが(いや、申し訳ない)、天然素材や天然成分というものにもし安心という理由があるとしたら、それはおそらく人間の経験主義、広い意味での人体実験によるものだろう。ただ、長期間試されたことがないものが単に天然で採れたというだけで体にいいとかやさしいなんてことはないわけで、そういう商品については現代の広告主義的なマジックによってごまかされる危険がある(とりあえず「天然」と書いておく、みたいなやつ)。天然の放射線だから体にやさしいなんてことはやっぱりないわけです。たぶん、おそらく、知らんけど。