天然成分

 商品に天然成分とか、天然素材使用などと書いてあるケースがよくある。しかし、考えてみれば、天然だから何なのかというとよくわからない。

 商品に謳われる「天然」という言葉は、一瞬よいもののように見えて、実は意味としては「化学合成ではない」ということしか言っていない。まあ、印象のマジックである。いや、おれだって、買うときに天然ナンタラと書いてあったら、そちらのほうがよさそうに思ってしまう。しかし、たとえば、「天然トリカブト使用」だから体にいいとか効き目がやさしいなんてことはないわけで、天然なら何でもよいというものではない。化学合成だって、自然界でも行われており、人為かそうでないかというだけの違いである。人為の全てがよくないというわけでもない。

 なかなか一般人には素材のひとつひとつの知識を得るのは大変だし、商品の内容を知るのは面倒だ。化学合成品についてはいろいろとよくない話も聞く。そんなこんなで、「天然」と書いておけば、とりあえず安心っぽい、やさしいっぽい、というふうに見えるし、便利だ、ということなんだろう。同じ天然でも、あるいは人為的化学合成でも、実はその内容は多岐にわたるはずで、「天然」云々というのは正体のあるようなないような話と思う。