企業サイトのお見舞いの言葉

 日本の大企業のウェブサイトを見ると、今はトップページにたいがい「被災された方に心よりお見舞い申し上げます」というような文言が書いてある。もちろん、本当にお見舞いの気持ちというのもあるだろうし、他の企業が出しているのにうちが出さないのはいかがなものかとか、そういうものを出すべきような流れ、ムードができているからということもあるのだろう。しかしまあ、みんながみんな出していると、どうしても「型通り」という感じに見えてしまう。

 そういうなかで、わたしが見た範囲では、メルセデス・ベンツの日本支社とトヨタのお見舞いの言葉に誠意を感じた。

 まずは、メルセデス・ベンツ

→ メルセデス・ベンツ日本公式サイト

 日本支社長のニコラス・スピークス氏が個人名で出している。この文章は、スピークス氏、あるいはスピーチライターの手によるのかもしれないが、その人の本心ではないかと思う。通り一遍ではなく、被災者ひとりひとりへの目線があり(「親しい方や大切な生活を奪われた」という書き方がそうだ)、復興への道を勇気づけるような内容でもある。

 次にトヨタ

→ トヨタ自動車

 こちらは、社長の豊田章男氏が肩書き付きで出している。被災地を視察した印象と、企業としての取り組みの方針をまとめている。経営者としての視点と責任感が感じられ、信用できる企業というふうに感じさせる。

 メルセデス・ベンツも、トヨタも、トップが個人名を出している。そして、経営者としての立場も含めて個人の視点で書いている。これが伝わる理由ではないかと思う。

 そもそも法人格の企業が「心よりお見舞い申し上げる」とはどういうことなのだろうか。組織が「感じる」「思う」とはどういうことなのか。お見舞いの言葉に限らず、広く広告コピーというものに関連することなのだが、本当と嘘の間にある建前、了解の問題が、お見舞いの言葉の問題に見え隠れしているように思う。