起承転結考〜その2

 昨日に続いて、起承転結の話。


 昔々に書いた覚えがあるのだが、典型的なブルースも起承転結で捉えられるのではないかと思う。


 ブルースには12小節のものが多い。典型的なコード進行はこうだ(キーはC)。


|C7 |F7 |C7 |C7 |
|F7 |F7 |C7 |C7 | 
|G7 |F7 |C7 |G7 |


 5小節目でF7に変わるが、大きく曲調が変わったという感じはしない。
 しかし、9小節目のG7では、がらっと変わった印象になる。そうして、11小節目のC7でとりあえず終わった感がする(わたしの人生の話ではない)。


 起承転結で言うと、こうだ。


|(起)C7 |F7 |C7 |C7 |
|(承)F7 |F7 |C7 |C7 | 
|(転)G7 |F7 |(結)C7 |G7 |


 えーと、コード譜に慣れていない方には何が何だかわからないですよね。音声で聞いてみていただきましょうか。


→ ブルースのコード進行


 歌詞で見てみよう。


 有名な“Sweet Home Chicago”の1題目はこうだ。


Come on,
Baby don't you wanna go?


Come on,
Baby don't you wanna go?


Back to that same old place


Sweet home Chicago


 訳して、起承転結を記すと、こんなふうだと思う。


(起)よう、ネエちゃん、
行ってみたかねえか?


(承)よう、ネエちゃん、
行ってみたかねえか?


(転)なつかしい土地に帰るのさ


(結)いとしの故郷、シカゴ


「起」で話し始めて、「承」でもう一度繰り返す(典型的なブルースにはこのパターンが多い)。で、「転」で別のこと、しばしばハッとすることを言い出して、「結」で締める。


 歌で聞いてみていただきましょう(ボーカル by オレ)。


→ Sweet Home Chicago


 中途半端さに、みなさんのコマった顔が目に浮かぶようです。どうも申し訳ありませんでした。


 アメリカの中南部で綿花を摘んだり、シカゴの場末で飲んだくれたりしていた黒人のオッサン達が「起承転結」という言葉を知っていたとは思えない。しかし、物の感じ方には似たものがあると思うのだ。


「起承転結」というのは、金科玉条的な構成法というよりも、物事の切り取り方と心の流れの捉え方なのだと思う。