今年1年は、落語を中心に、結構、東京近辺のいろいろなホール・劇場に行った。
生で見る物というのは、ホールの雰囲気、そこで働く人の感じ、というのも結構、楽しみ具合に作用するように思う。
今日はわたしの好きなホール、3つについて書いてみたいと思う。
第3位 国立演芸場
国立の劇場や博物館には、案外、温かい雰囲気のところが多い。
古い建物が多く、そこで働いている人があまりせかせかしていないからかもしれない。
国立劇場もいいけれども、大きすぎるし、わたしのようなダラケた人間からすると、ちょっと気張った感じがする。
その点、隣にある国立演芸場はこじんまりとしていて、気楽で好きだ。品がいいのにくだけている。
何者なのかよくわからないのだが、国立演芸場の主のようなオバサンがいて、客を出迎えてくれる(あの人も国家公務員なのだろうか)。常連さんとおぼしきお客と世間話なんかしている。
ロビーにやたらと椅子があり、幕間にいなり寿司やなんかをつまみながら、のんきに酒を飲めるのもいい。
裏に最高裁判所があって、死刑の話をしているとはとても思えない(向こうからすると、なぜにこんなところでマジックショーなんぞやっているのだ、という感じだろうが)。
第2位 横浜にぎわい座
ここは家から割に近いこともあって、よく行く。
何がとりたてて優れている、ということもないのだが、好きだ。
椅子の背にカップホルダーがついていて、ビールやなんかを飲みながら落語を聞ける(酒の話ばかりで恐縮だが)。軽く酔って、パーの状態になって落語を聞くのはとてもいい。
カップホルダーもそうだが、客がのんびりできるように細かいところに配慮がされていて、しかもこれみよがしではない。館長の玉置 宏(そう、あの司会の王様)の人柄、目配りから来ているのだろうか。
働いている人は礼儀正しく、客への心配りがあって、でも、どこか素人っぽい。変に慣れていない感じがする。にぎわい座のある野毛の地元のオジチャン、オバチャンなのだろうか。そんなところも結構、好きだ。
第1位 歌舞伎座
やっぱりねえ、行くと、伝統というか、そこで流れてきた時間というものをなめちゃいけない、と感じる。
ここは席に座ったときの空間の感じも、舞台の見え具合も、ロビーの雰囲気も素敵だ。
案外とモダンで、クラシックやジャズのコンサートなんかをしてもハマるんじゃないか。
客は、やはり、ご年配の女性(ババア、とはっきり書かないのは、わたしが上品だからである)が多いのだが、彼女達の、歌舞伎はもちろん、歌舞伎座に来ること自体を楽しんでいる雰囲気も好きだ。
ロビーでホストの人達が集まっているのを見かけたことがある。おば様方をエスコートしてきたのだろうか。お互いに時計やなんかを自慢していて、芝居は見ず、ずっとロビーでたむろしているようだった。
とまあ、結局、日本風のホールばかりになってしまった。
わたしの趣味なんだろうが、オペラタイプのホールはエラソーな感じがして、ちょっと苦手だ。外国のオペラホールからいろいろ意匠を借りてきたものの、日本に馴染んでいない気がする。ま、わたしが馴染めないだけなのかもしれないが。
また、建築家の自我丸出しの「どうだ、おれのデザインだぞ」調のホールも嫌いだ。
お金をかけたことをこれ見よがしに見せるようなホールより、市役所や区役所と一緒になっているような安っぽいホールのほうが、まだいい。行政の偉い人や建築家の自慢を感じなくて済む。
ホール、劇場の雰囲気というのは、そこに来る人達が空間にどのくらい馴染んでいるか、気に入っているか、に左右されるようにも思う。
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