「男はつらいよ」の寅さんの決まり文句で最もよく知られているのは、「結構毛だらけ猫灰だらけおケツのまわりはクソだらけ」というやつだろう。
わたしは何度も聞いているせいで、今ではあまり面白く感じなくなってしまった。
芭蕉の「古池や蛙飛込む水の音」という句を、なかなか新鮮に味わえないのと似ている。
寅さんの決まり文句で好きなのは、「へええ〜、見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし」。
ハハ、そりゃ、見上げるなあ。
この手のセリフはどこから来たのだろう。
渥美清か山田洋次監督の創作なのか、それとも昔からそういうセリフが伝わっていたのか。
渥美清は若い頃、実際にアメ横あたりでテキ屋をやっていたそうだから、そこから来たのかもしれない。
「見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし」のような洒落を、何と呼ぶのだろうか。
「相手の立派な行動を見上げる」と、「屋根屋のふんどしを見上げる」とを掛けている。
洒落は洒落だが、駄洒落とは呼ばないだろう。かといって、掛詞と呼ぶと、何だか和歌の話みたいだし。
上方のほうの笑いはあまりよく知らないが、この手の言葉遊びは、どちらかというと江戸〜東京の笑いに多い気もする。
昔の遊郭では、客に最初、ちょっと顔を見せたっきり、やってこない女郎を「三日月女郎」と呼んだんだそうだ。
そのココロは、「宵にちらりと見たばかり」。
いいなあ、こういう洒落のセンス。