先ほど、古い東京の言葉、訛は滅びかかっていると書いたけれども、例外が「ない」を「ねえ」とする言い方だ。
「やってられない」を「やってらんねえ」とする類の言い回しは、なぜか全国的に広まった。
逆に考えると、全国的に広まったから、東京弁には珍しく生き残ったのかもしれない。
それはともかく、この「ai」→「ee」という変換、簡単に東京弁らしきものを作り出せて、楽しい。
「うるさいでしょうが、ひとつ、勘弁してください」なら、「うるせえでしょうが、ひとつ、勘弁してくだせえ」。
「なあ、兄弟、帰りに一杯、どうだい?」なら、「なあ、きょうでえ、帰りにいっぺえ、どうでえ?」。
書いてるだけでイナセな気分になってくる。物事は何事もこう、鉄火に行かなきゃなんねえ。
戦前、東京の下町の人は「大日本帝国、万歳!」をどう発音したのだろうか。
「でえにほんてえこく、ばんぜえ!」なんて言ってたのか。
軍人さんにメチャクチャ叱られそうである。
ま、古くからの江戸〜東京育ちの人は、突然やってきて威張り始めた薩長土肥を心の中じゃ嫌っていたろうから、案外、ヤケクソ気味に「でえにほんてえこく、ばんぜえ!」だったのかもしれない。
みなさんも、この「ai」→「ee」で、ひとつ、江戸っ子ごっこをやってみておくんない。
もっとも、「内外タイムス」を「ねえげえテエムス」、「グッドバイ」を「グッドベエ」なんてのは、さすがにやりすぎだ。物事には、ほどというものがございまして。
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「今日の嘘八百」
嘘三百八十六 今、江戸弁を使うのは、噺家とイナカモンです。