どうも影響を受けやすいタチのようで、少し前に「坊っちゃん」を読んだ後は、しばらく漱石独特の、短いリズムの文章、言い回しを使いがちになった。
普段、電車で移動しているときはたいがい落語を聞いている。時間をつぶせ、イラつかないので、都合がいい。
ただ、言葉遣いや口調の影響を受けてしまうところだけが困る。
打ち合わせで「そいつァ、了見違えってもんじゃありませんかねェ」などと言ってしまうのだ。
特にまずいのは、幇間(たいこもち)が出てくる噺を聞いた後だ。
「よっ! そこンところに気のつくのが、アータってェ人だ!!」
なんて、やらなくてもよいヨイショをしてしまう。
志ん朝を聞いた後だと、つい、「ン〜?!」と少し語尾が上がるあの独特の口調が混じってしまうし、円生を聞いた後だと、スーッと唇の隙間から息を吸う癖を真似てしまう。
談志を聞いて打ち合わせにつくと、んーーー、と低く唸りながら不機嫌そうに席につき、気に入らない客(クライアント)を怒鳴りつけてしまう。
……なんてところまではまだ行っていないが、打ち合わせ前の談志は要注意と考えている。