文明と文化

おれは昔から流行とか新しさというものに興味がない。 昔、知人と話していて、「そういう考え方してると流行に遅れるよ!」と言われて、驚いたことがある。流行に乗る/遅れるということが大事なことなんて思ったことがなかった。 新しさについても同様で、…

日本の魔法使い

ひさしぶりにロード・オブ・ザ・リング・シリーズの「二つの塔」を見た。 ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(字幕版) イライジャ・ウッド Amazon おれはあんまりファンタジーが好きではないんだが、これはよくできていて、飽きずに見ることができた。 見な…

テクロノジーと色気

携帯型の扇風機を持って風を当てている女性を見かけることが多くなった。 たいがいが淡い色をしたプラスチックの扇風機だ。若い女性が使っていることが多い。男が使っているのはあまり見かけないし、年配の女性が使っているのも見かけない。 何年か前に中国…

外来種は悪なのか?

よく使う地下鉄駅にこんなポスターが貼ってあり、ムムムとなった。 外来種に対するいわゆる啓発ポスターである。「ラストカルテ」というのは読んだことないが、おそらくそういう漫画があり、行政と漫画とのいわゆるコラボというやつなんだろう。 おれがムム…

間抜けな日本論

ある元外交官が書いた本を読んだら、あまりに杜撰な考え方だらけなので、驚いてしまった(紹介するに値する本ではないので、書名は書かない)。 その人によれば、日本は瑞穂の国で、日本の成り立ちは稲作に始まり、稲作=物づくりの精神が日本を支えてきたん…

“いのち”との距離感

マグロの解体ショーなるものがある。 大きな板の上に巨大なマグロを載せて、出刃包丁を腹にぶっ刺し、切り開く。臓物を取り出してから、肉を細切れにしていって、赤身だの中トロだの大トロだのに分けていく。 なかなかに豪快な、威勢のよい見せ物である。 そ…

ラテンアメリカ小説遍歴(2023年)その3

年末年始からラテンアメリカ小説を読み続けてきた。その記録、三回目。 精霊たちの家 上 (河出文庫) 作者:アジェンデ,イサベル 河出書房新社 Amazon チリの女性作家イサベル・アジェンデの大河小説。母系でたどる三代の女性を中心とした物語。 デビュー作で…

毛の不思議

おれは口ひげと顎ひげをはやしている。 不思議なのは口ひげと顎ひげで色がまったく違うところだ。口ひげはほぼ黒で少し白髪が混じっている。顎ひげは真っ白でジェダイみたいだ。ごく近いところにあるのになぜだろう。 頭髪は白髪三分咲きといったところ。脇…

松本大洋の花男を読み返した

松本大洋の「花男」を読み返した。二十年ぶりかそれ以上かもしれない。 花男(1) (ビッグコミックス) 作者:松本大洋 小学館 Amazon 巻末を見ると、三十年以上前の作品である。同時代の漫画を今読むとさすがに時代を感じることが多いが、「花男」はそんな感…

首相官邸の忘年会って騒ぐほどのことなのか

岸田首相の政務秘書官である長男が首相官邸で忘年会をやって、内閣の記念写真を撮るひな壇で友達と写真を撮ったというので、クソみそにケナされている。Twitterで「岸田 長男」で検索すると、ボロカスに書かれているし、おれはテレビを見ないんだが、テレビ…

首相の在任期間

今、ちょぼちょぼと安倍政権のふりかえりについての本を読んでいる。 安倍元首相は在任期間(第二次)が7年8ヶ月と憲政史上最長を記録した。しかし、アメリカの大統領は二期なら8年、一期でも4年だから、それに比べればそれほどの長さではない。 日本の首相…

顔を隠すと美男美女になるのか

コロナ禍がだいぶ明けて、マスクをしない人が増えてきた。 あれ、この人、こんな顔だっけ、と思うことがある。マスクをしていたときと外したときの顔のイメージがだいぶ違うのだ。 その、こんな顔だっけ、は美男美女の視線でいうと、マイナスの方向のことが…

住みづらい世の中だぜ

おれはアニメが嫌いで、目にすると拒否反応が出てしまう。 十代の頃は普通に見ていたが、二十代になる頃に違和感を覚え始めた。それでも、宮崎駿の映画は見ていたのだが、あるとき、確か「千と千尋の神隠し」だったと思うが、大仰な演出に嫌気がさして、以来…

英語と洗練

街を歩きながらちょっと注意すると、英語の看板があふれていることに気が付く。別に日本語のできない外国人に便利なように、というわけではなくて、なんとなく洗練されて見えるからだろう。道ゆく人のTシャツやトレーナーには英文がよく書かれている。 本の…

マンション爆心地問題

マンション販売には独特の文化があるようで、いわゆるマンションポエムと言われるものもそうだ。郵便受けに入ってくる新築マンション販売のチラシはポエムの宝庫である。 洗練の高台に、上質がそびえる。 誰も知らない憧憬が、日常となる。 この先、これほど…

選挙カー的な民主主義に意味があるのか?

統一地方選挙で選挙カーがとてもうるさかった。「うるさい」という言葉は「五月蝿い」とも書くが、ぴったりである。 区議会議員、市議会議員は国政選挙に対して1選挙区あたりの候補者がとても多いから、繰り出す選挙カーも必然的に多くなる。五月蝿いわけで…

日本画と動物と距離

おれは絵が好きで、洋画も日本画も見る。 日本画は言うまでもなく、中国からの影響を非常に受けている。中国画をモデルにしつつ、徐々に独特な画風、画題を発展させていったというのがざっくりした日本画の流れだと思う。日本は昔からガラパゴスだったのだ。…

小津安二郎「お早よう」を見る

小津安二郎の「お早よう」を見た。見るのは初めてである。 お早よう ニューデジタルリマスター 佐田啓二 Amazon 郊外の住宅地が舞台である。戦後の同じかたちをした安普請の建売が並ぶ。そこに住む人々の人間模様が描かれる。 テレビがほしいと駄々をこねる…

イヤなコピー

世の中、広告だらけであって、ちょっとでも隙間があると広告が入ってくる。現実世界でも、ネット上でも、だ。果たして広告費に見合うだけの経済活動が世の中で行われているのか、と、ちと疑問に思う。 そんなこんなで日々、大量の広告コピーを目にするわけで…

選挙の宣伝 だから何なのだ

町を歩いていると、よく選挙の宣伝ポスターに出くわす。たいていは立候補者の名前に「誠実と実行」とか「〇〇区に市民の力」みたいなどうでもいいようなコピー、それにちいさめの文字で候補者の多少の売りが書いてある。 でもって、その多少の売りのところに…

「安倍晋三 回顧録」で少し安倍さんを見直した

「安倍晋三 回顧録」を読んだ。 安倍晋三 回顧録 作者:安倍晋三,橋本五郎,尾山宏 中央公論新社 Amazon 首相在任中、おれはあんまり安倍さんのことが好きではなかった。国権主義、強権主義的なところになんとなく反感を持っていて、物の考え方にあんまり深み…

ラテンアメリカ小説遍歴(2023年)その2

昨年末以来、相変わらずラテンアメリカの小説を読み続けている。以前に「ラテンアメリカ小説遍歴(2023年)その1」を書いたその続き。 ラテンアメリカの小説がブームとなったのは1960年代から70年代にかけてだ。金字塔と言うべき、ガルシア=マルケスの「百…

死の川柳

杉浦日奈子の昔の漫画を読んでいたら、こんな川柳が出てきて、思わず笑ってしまった。 二階から落ちる最期のにぎやかさ 「最期」である。ドタドタ、ガラガッチャン、と賑やかなのである。 誰がつくったか知らないが、すごいところを突いてくるものである。 …

フルメタルジャケット〜ピークとエンドの記憶

ひさしぶりにスタンリー・キューブリック監督の「フルメタルジャケット」を見た。キューブリック作品はどれもそうだが、緊迫感と絵の美しさ、そして怖さに満ちている。 フルメタル・ジャケット (字幕版) マシュー・モディーン Amazon 大きく二部に分かれてい…

罪と制裁といじめと

回転寿司屋で悪ふざけをした少年が学校を自主退学したそうだ。 悪ふざけをする動画が出回り、誰が調べるのか、高校や顔写真がネット上でさらされた。推測だが、高校に行きづらくなってやめたのだろう。 イヤな話である。悪ふざけをする少年が悪いのは当然だ…

昔のロックの邦題

シモの話で恐縮だが、昔から痔持ちで、この頃悪化してきたので近くの肛門科の医者に診てもらった。 肛門に指を突っ込まれ、何かこう、屈辱的な心持ちに陥りながら、頭のなかではこのジャケットを思い浮かべていた。 ユーライア・ヒープの「対自核」である。…

生まれて殺されるのと、生まれないのと、どちらが幸せなのか?

ある本を読んでいたら、菜食主義者の著者が肉を好む女性を説得する場面が出てきた。 肉の害悪についてあれやこれやと述べたてるのだが、その中に「牛が殺される前に泣くのを知っていましたか」というセリフがあった。牛がかわいそうだから、肉を食べるのをや…

自意識過剰な人々

YouTubeを見ていると、「日本のここが凄い」とか、「世界が驚いた日本の◯◯」とか、「◯◯人に日本の◯◯を見せてみた(食べさせてみた)」とか、その手のタイトルをよく見かける。馬鹿馬鹿しいので動画自体は見ないが、おれはニッポン・バンザイ論と呼んでいる。…

ラテンアメリカ小説遍歴(2023年)その1

正月にガルシア=マルケスの「エレンディラ」を読み直したら、相変わらず面白く、その流れでラテンアメリカの小説をあれやこれやと買い込んでしまった。今は順番に読んでいる。 昨年も、年末年始にガルシア=マルケスを読んで、ラテンアメリカ小説ブームがお…

イメージが違う名前

名は体を表すというが、どうも実際のイメージと名前のイメージが食い違うものもあるんじゃないかと思う。 たとえば、 パピヨン スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマン主演で、絶海の孤島の刑務所から脱獄するという、カッコよくハードな映画のタイ…