家来から子どもへ

 先週、この頃は「核家族や単独世帯が増えて、家族(主に子ども)の便利な代わりとしてペットを選ぶことが増えたんだろう」と書いた。

 まあ、実際にはペットといってもいろいろであって、蛇やトカゲを飼っている人は子どもの代わりとあまり感じてないかもしれない。蛇やトカゲは人間に似た反応が少ないからだ。実際、爬虫類は人間に媚びないから好きだ、という人もいる。

 一方、ペットの代表である犬や猫は子どものように扱われることが多い。親が子どもを着飾るように犬や猫を着飾る人をよく見るし、何より言葉遣いが「もうちゅぐご飯でしゅからねー」だ。大人が赤ちゃんに対して赤ちゃん言葉を使うのは、赤ちゃんに近い目線におりて心理的に近づきたいからだろう。ならば、犬に対しては「バウバウバウ」と犬言葉を使うのが筋ではないか。

 昔はおそらく人間と飼い犬の関係は主人と家来に近かったろう。桃太郎と犬の関係である(桃太郎の家来の犬には名前すらない)。親子に近いような感じ方もあったろうが、おそらく主ではなかったはずだ。少なくともおれは犬を赤ちゃん扱いする昔の話を読んだことがない。

 今も飼い犬に対して身分、立場の差をつけていることは多いだろうが、一方でここ二、三十年来だろうか、赤ちゃん、子どもの代わりとして「でしゅねー」的に可愛がるのをよく見かけるようになった。古今亭志ん生の言う「糸っくずのかたまりみたいな犬」が増えてからかもしれない。

 別に調査したわけではないが、最初に書いたように、犬や猫の赤ちゃん扱いは単身や単独夫婦に多いように感じる。なぜなら、犬や猫は便利な赤ちゃんだからである。