本音を表すための大阪弁

 平成30年間(1989 - 2019)の日本の言語表現として、大阪弁の全国進出が挙げられると思う。

 おれはもっぱら東京周辺を生息圏としており、東京中心の言語感覚しかわからないのだが、日常会話に大阪弁が入ることが増えた。

 たとえば、仕事の場で「ぶっちゃけ」という言葉がよく出てくるが、おそらく30年前にはありえなかった言葉遣いだろう。「ぶっちゃけ」はおそらく大阪の漫才の「ぶっちゃけた話が」の短縮形だろう。共通語で「すべてをぶちまけたうえでの話ですが〜」などというと、まどろこしくて、なかなか言葉として使う気にならない。「ぶっちゃけ」ならたったの三音節である。

「ちゃう」というのもここしばらくの間に広まった言葉だ。「違う」というと、断定的で角が立つが、「ちゃう」ならやわらかく、しかも意志の表現ができる。

 全般に、東京由来でNHK作の共通語は、どこか東夷的に荒っぽく、また生活に根ざしていない分、冷たい(本当の東京言葉は違うのだろうが)。NHK財務省で話されている言葉という印象である。

 その点、大阪の言葉は直截的で、しかも人間の生なぶつかり合いを避けるようなやわらかさがある。友達からの誘いをやんわり断るときの「考えとくわ」というのはその典型である。

 同じ関西言葉であっても、京都弁はまた違って、聞く側に裏を読み取る力が求められる。「そうですなぁ。いろんな事情がおますからなぁ」などと言われると、初心者には、なんなのだ、なんなのだ、複雑な家庭環境でもおますのか、などと考えてしまう。

 大阪弁というのは直截的、かつ人への当たり方がやわらかく、言語表現、コミュニケーションの道具としてよくできていると思うのだ。(河内弁は知りません)