「緊張感をもって臨んでいただきたい」
という言い回しがあって、社長や大臣などのエラい人の訓示によく出てくる。
こういう言葉が出てくる背景は何なのだろうか。
まずは緊張感をもって臨むと、よい結果が得られるという考え方があるのだろう。一方で、わざわざこういう訓示が出てくるということは、“人は放っておくと、ダラけてしまうものだ”という認識があるとも考えられる。イメージとしては、北斎漫画である。
北斎漫画の緊張感のない人々。
おれは住んだことがないので本当のところはわからないのだが、アメリカ方面では割にリラックスということを大事にしているようである。「Relax and enjoy yourself.」などという言い回しがあり、ということは、日本とは逆で、リラックスして楽しむとよい結果が出、人間、放っておくと緊張してガチガチになってしまうものだ、という認識があるのかもしれない。
試験の前なんかにもこの認識の違いが出る。これから試験に向かう学生に、日本なら「頑張って」と声をかけるのは普通だろう。あるアメリカ人の学生に「頑張って」(にあたる英語。忘れてしまった)と言われたらどう思うか訊ねると、「言われなくてもこれまで頑張ってきたよ! これだけさんざんやってきたのに、これ以上を求めるの!? とカチンと来る」という答えが返ってきた。自分なら「Good luck!」と声をかけるというのだ。これまで頑張ってきたろうから、あとはうまくいくように幸運を! というわけだ。
まあ、日本語の「頑張って」は文字通りの意味ではなくて、「あなたのこと、気にかけてますよ」くらいの意図の場合も多いのだが、ともあれ、日米で物事に向かう姿勢というか気の持ちようの捉え方は違うようだ。そういえば、「テンションあがる!」というのが日本語ではいい意味だが、アメリカでは緊張感が高まるというのはあまりよい捉え方をされなさそうである。日本は緊張感を好ましく捉える傾向があるのかもしれない。
いざというとき、緊張感より集中力のほうが大事だと思うのだけどね、おれは。