ナチュラル・ボーン・パッケージ

 今朝、辛子明太子で飯をわしわし食いながら、ふと思った。「タラコ(明太子)はひとつひとつがきちんとパッケージされておる。実に素晴らしい」。

 

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 タラコの実体は小さな卵の集まりだが、それを薄皮で包み、お一人様向けに整形されている。素晴らしい。

 東海林さだおが昔、「バナナの気づかい」か何か、そういうタイトルのエッセイを書いていたと思う。バナナは一本一本がパッケージ化されていて、そのパッケージが剥きやすく、しかも手に持つと口のほうに先っぽが向くような形になっている。実に食べる側に気づかいしてくれている果物だというのだ。

 

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 確かにバナナは素晴らしい。栄養も含めて、群を抜いて優れた食物だと思う。

 パッケージという点では、他にもいろいろと優れた食物がある。同じ果物では、ミカンやオレンジなどの柑橘類がそうで、持ち運びやすく、中の汁が漏れないように厚い皮で包んであり、しかもバナナほどではないにしても剥きやすい。リンゴやブドウではそうはいかない。

 

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 あえて言うなら、バナナにしても、柑橘類にしても潰れやすいところが難点ではある。手で運ぶにはいいが、大量輸送するとき、きちんと緩衝材を入れないとぐちゃぐちゃになってしまう。また、皮がやわらかく、水気が浸透しやすいため、ひとつが腐る(つまり、菌が繁殖する)と他にも一気にひろがってしまう。

 その点、パイナップルやドリアンは皮が固く、より輸送に適している。ただ、素手では剥きにくい。このあたりはほとんどトレードオフの関係である。

 

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 パッケージデザインとして優れているとおれが思う食物はサザエだ。

 

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 手頃なサイズに整形された中身が硬い殻の中に入っている。しかも、ここがサザエの優れたところだが、中身が漏れないよう、きちんと蓋がされている。手に取りやすいハンディなところもいい。さらに、海女さんが取りやすいよう、水中にただ転がっているのだ、サザエは。おれはキリスト教徒ではないが、サザエとバナナを見ると造物主の存在を信じてもいいような気になる。造物主はパッケージデザイナーでもある。