物が生きたものとして化けるということが日本には昔から伝わっているようで、たとえば、唐傘お化け、提灯お化けなんていうところが有名だ。うろ覚えだが、確か、中国の怪談にも物が化ける話があったと思う。欧米についてはよく知らないが、あまり聞いたり読んだりした覚えがない。
物が化けるという発想がどこから生まれるのかはなかなかに興味深い。打ち捨てられた物というのは何か寂しく、またなんとなく人に似ているようにも見え、そういう感覚から来るのだろうか。
とはいえ、現代では物が化けるという話があまりないようで、唐傘お化けにしても、提灯お化けにしても昔の物が昔の話として化けているだけである。
それらを現代に引き換えるとどうなるのだろうか。ワンタッチ・コウモリ傘お化けとか、懐中電灯お化けになるのか。どうもあまり怖い感じがしない。箒のお化けは今なら掃除機のお化けだが、ダイソンのお化けなんてちっとも怖くない。吸引力が優れるだけである。
現代の魑魅魍魎はもっぱらネットあたりに生息しているようだから、怖いものほしさというのはそっちのほうに引っぱられているということかもしれない。