ふと出来心でディズニー映画の「パイレーツ・オブ・カリビアン」の二作目を見た。半分くらいまで頑張ったがついにノレず、見るのをやめてしまった。
おれはディズニー映画と相性が悪く、あまり面白いと思ったことがない。冒頭の、ディズニーランドのお城みたいなモーションロゴを見た途端、「嘘とまやかしの国め!」とひとりごちてしまう。
うんざりしながら見ている間に「クロサワランドを作れないか?」と考えた。映画史にその名を轟かす黒澤明監督作品のテーマパークである。
映画関連のテーマパークといえば、京都の太秦映画村とか、あと世田谷の砧にも東宝のものがあったと思う。ああいう撮影セットっぽいものではなくて、ディズニーランド並みにどかんとお金をかけて、黒澤明作品で遊べるようにするのだ。
入園口はもちろん羅生門である。
受付の京マチ子(女装束)と三船敏郎(盗人)の案内内容が食い違っていて、入園者はいきなり頭に?を百個くらい並べることになる。
ディズニーランドの象徴、シンデレラ城にあたるのは蜘蛛の巣城である。中に入るとびゅんびゅん矢が飛んできて、命がけだ。
蜘蛛の巣城の横にはなぜか公園があって、志村喬が雪の中、ブランコを揺らしている。ディズニーランドと同じような山もあって、斜面でいかりや長介の鬼(「夢」)が悶え苦しんでいる。
ディズニーランドのエレクトリカルパレードにあたるのは同じく「夢」の狐の嫁入りだ。
「七人の侍」からはどのシーンがいいだろうか。ラストの野武士との決戦もいいが、おれとしては中盤の野武士の砦を推したい。平八(千秋実)に扮して、錯乱した百姓の利吉を救うために飛び出し(泣ける)、火縄銃で撃たれるのだ。
ちなみに、矢で射られても、銃で撃たれても大丈夫。診療所で赤ひげが仏頂面で治療してくれるからである。
さらに先に進むと、「天国と地獄」の横浜黄金町の麻薬窟に至る。麻薬中毒患者の菅井きんに「何さ、ジロジロ。おれたちゃ見せもんじゃねぇや!」と悪態をつかれる。
隣では「ブリキは燃えねえってんダヨ!」と焼却炉番のオッサン(藤原釜足)が怒鳴っている。米兵の集まる怪しげなバーでブギウギも踊れる。
「用心棒」の町ではジャイアント馬場にそっくりの巨人(羅生門綱五郎)が暴れている。加東大介の着ぐるみに「お前ぇ、強いんだってな」と言うと、大喜びで踊りだす。
クロサワランドのミッキーマウス
前代未聞、空前絶後のテーマパークになること、間違いない。問題は黒澤監督であるからして、完璧主義に徹しなければならず、予算は倍増、工期ものびのびでいつ完成するやら、誰にもわからないことだ。