デジタル・ネイティブの衝撃

 五歳になるおれの甥は(おれが五歳という意味ではない)二、三歳の頃から親のスマホやお姉ちゃんたち(十歳ほど違う)のタブレットをおもちゃにして成長してきた。子供の頃からデジタル環境が整っている人々、いわゆるデジタル・ネイティブである。

 iPhoneにSiriという音声認識&発話システムがある。マイクに話しかけると用を足したり、返答したりしてくれる。甥はSiriの使い方を覚えてからボキャブラリーが爆発的に増え、母親(おれの妹)が何かで叱ると、「何をおっしゃっているのか、わかりません」と微妙な機械音口調で返すのだそうだ。また、妹が甥とSiriの会話を聞くともなしに聞いていると、甥が何を言ったのか、Siriに「親しき仲にも礼儀ありですよ」とたしなめられたこともあったという。

 こういう話をすると、「おれたちが子どもの頃は野っ原を走り回って、バッタの足を引きちぎったり、カエルの尻にストローを突っ込み、息を吹き込んで爆発させたものだが・・・」などと将来を憂う人が出てくる。しかし、おれはあんまり心配はしていない。人の本性、喜怒哀楽はそう変わるものではあるまい、と楽観視している。

 なお、甥にデジタル機器ではなく、紙の雑誌を渡すと、写真をどんなにスワイプしても切り替わらないので「あれ? あれ?」と不思議がるそうだ。