黄色い洟

 今日はいささか汚い話なので、その手の話題が苦手な方にはご容赦いただきたい。
 何かを人にたとえて考えてみることがあって、退屈しのぎになる。蝿でも電柱でもカーテンレールに引っかけたハンガーでも、「この人はどういう心持ちなのであろうか」と想像するのはなかなかに面白いものだ。
 先日来、風邪をひいていて、ようやく治った。もっとも別に苦しくはなく、最初の頃、少しふらついた程度だった。ただ、毎日大量の洟が出るのには往生した。それも、例の黄色いヘチャッとしたやつだ。眠っている間に鼻の中で乾燥すると、ゼリー状のおぞましい物体になった。
 あの黄色い洟というのは白血球などの免疫細胞の死骸なんだそうだ。外から攻めてきた細菌と抱き合って自分も死んでしまうらしい。なかなかの壮挙である。
 今回の風邪は苦しくなかったので、細菌の攻撃力そのものは大したことなかったようである。しかし、長引いたという点では持続力のある攻撃であった。おかげでおれの体内の、大量の白血球が戦争の犠牲となった。痛ましい。
 敵と刺し違えて死ぬんだから、特攻隊的であって、文字どおりの捨て身である。血気盛んでもあって、寺田屋の変だったか、池田屋の変だったか、「おいごと刺せ、おいごと刺せ」という具合だ。白血球は薩摩隼人なのだろうか。