「日本人は」

 SNSやら何やらでネット上の文章を読むと、よく「日本人は〜」という類の文章に出くわす。「日本人の勤勉さは〜」とか、「日本人にとってモノヅクリは〜」とか、「日本人は農耕民族で〜」とか、「日本人は列に並んでも〜」とか、まあ、いろいろある。ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもあって、ここではそのいちいちの信憑性は問わない。
 おれは外国語がろくにできないし、他国に住んだこともないから国際比較ができないけれども、日本人の日本人語りというのは相当な量なんではないか。
「日本人は日本人語りの好きな民族である」
 などという日本人論をとっさにでっちあげてもいいくらいだ。
 なぜこうも異常なくらいに日本人語りがはびこっているのか、興味深い。おれのあんまり当てにならない霊感では、黒船・文明開化以来の欧米コンプレックスとそれへの反発、徹底的に叩きのめされた第二次世界大戦、当時の東アジアの中では先鞭を切った高度経済成長、そして昨今の周囲の国々の経済成長に対する相対的没落への不安、なんぞがこう、混じりアーニになって、「わしらはこうなんで、リッパなんだ」「ダメなんだ」という自分語りにつながっているんではないか。おれは馬鹿なうえに面倒くさがりなんで、論証はできんけど。
 まあ、しかし、日本人語りもほどほどにしといたほうがいいんじゃないかとおれは感じている。ちょっとうんざりだし、第一、飲み屋で自分の話しかしない人みたいで、みっともない。