ご迷惑おかけして

 しばしば気になるのだが、電車の車内アナウンス、あれ、大げさに謝りすぎではなかろうか。「電車が遅れまして、大変ご迷惑おかけいたしました。深くお詫び申し上げます」、などと言う。遅れたと言っても2、3分だったりする。落語の「風呂敷」のアニさんではないが、「大変というのは大変なときに言うんだヨ」である。
 謝りようも大げさだが、理由が鉄道側のせいでなくても謝る。
「途中、強風のため、スピードを落として運行いたしました」
 安全のためである。仕方がない。
「線路に人が立ち入ったため、停車いたしました」
 悪いのは立ち入った人間である。鉄道側ではない。
「急病のお客様の救護のため、〇〇駅に停車いたしました」
 立派なことだ。むしろ褒めてさしあげたい。
 それでも、最後に「電車が遅れまして、大変ご迷惑おかけいたしました。深くお詫び申し上げます」などと言うのだ。
 こういうやたらと謝るココロは、言語習慣であるとともに、「コトを穏便に済ましたい」という城中的ご家老的御公儀の手前的心理も働いているのではないか。さらには、近頃ではとにかくクレームは面倒だから避けたい的なココロもあるように思う。まあ、運行に支障のないように、穏便に、穏便に、というところなのだろう。
 しかしまあ、あまり大げさに謝るのも奇妙に響く。かえって形だけに聞こえる。せいぜい、「電車が遅れまして、ご迷惑おかけいたしました」程度でいいんではないか。「大変」とか「深く」などと言う必要はない。
 今度、「あんまり謝るなよ!」と鉄道会社にクレーム言ってみるか。違うか。