稲本皇帝

 2015年のキラキラネームランキング1位は「皇帝」なんだそうだ。

→ livedoor News - 2015年キラキラネームランキング 1位は「皇帝(しいざあ)」

「キラキラネームランキング」というのは、「赤ちゃん名づけ」というスマホ向けアプリでアクセス数の多かったキラキラネームの順位らしい。面白がって見たのか、候補として見たのか、実際に名づけたのかはわからない。
 ランキング1位の「皇帝」は「しいざあ」「こうた」「さうざ」「すめかみ」「ふらんつ」「みかど」「れおん」「かいざあ」などと読むのだそうだ。シーザーは確か皇帝にはならなかったはずだが、それはまあ、いい。
 なんたって、「皇帝」である。字では「稲本皇帝」などと書くのだ。将来、その子がサラリーマンになったら名刺に「係長 稲本皇帝」などと記されるのだろうか。帝国の行き先には暗雲が広がっているようである。
 いっそのこと、「権大納言」とか「治部少輔」とか「加賀守」とか「弾正忠」とか「春信入道法性院大僧正徳永軒機山信玄大居士」などと名前をつけたらどうなるのだろう。「稲本権大納言」とか。役所に怒られるのだろうか。
 もっとも、今の女性に多い(小さい子には少ないらしいが)「〜子」というのも、平安時代には内親王や貴族の女子の名前であり、明治半ばまではもっぱら華族の女子の名前だったらしい。もしかしたら当時の平民が生まれた娘に「春子」などとつけると、一種のキラキラネームのように見えたのかもしれない。あるいは、鴎外先生の娘の名前「杏奴(あんぬ)」というのも当時にあっては随分なキラキラネームだったんではないか。
 おれの態度としては、基本的には好きにせい、なのだが、親のつけた名前から子どもは逃れられないんだよなあ、とも思う。
 おれだって、生まれてすぐに、「喜んで規則を守るように」という意味不明な理由で「喜則」という名前をつけられた。精一杯抗議したのだが、なにせ赤ん坊だったので、単なる大泣きにしか聞こえなかったという。