映画「MOZU」の喫煙シーンの多さが問題視されていることについて、伊勢谷友介が「タバコが嫌いなのを映画に当てつけてる。映画の時代背景やキャラクターのバックグラウンドは善悪ではない」とTwitterに記して、ちょっとした話題になっているそうだ。
→ シネマトゥデイ - 伊勢谷友介「MOZU」喫煙シーン批判に反論 ネット上では賛同の声
映画を見ていないし、批判も読んでいないが、たぶんそうなのだろうな、とおれも思う。喫煙シーンを問題にする人は、自分個人の好悪を社会正義にすりかえているのだろう。
高橋秀実の「からくり民主主義」にも同じような例が書いてあった。だいぶん以前のものだが、新聞のテレビ欄に載る視聴者投稿にこんなのがあったそうだ。
「さんまのスーパーからくりTV」(日曜、TBS)を見ているが、解答者のある女性タレントの「天然ボケ」にも飽きがきて、最近は彼女が答えるたびに腹立たしくなる。めったに正解を出さず、真顔でふざけた答えをされると、見ている人をバカにしているような気がしてならない。(二〇〇〇年八月三十日)
飽きがきて、バカにされているような気がしているのはあくまでこれを書いた人である。しかし、「見ている人をバカにしている」と書くと、あたかも社会正義(ちょっと大げさだけど)の側に立っているかのように見える。
環境問題にからめて「地球が怒っている」というような言い回しをする人もいる。大嵐や異常気象が起きると、「(人間の悪行のせいで)地球が怒っている」などと言い出すのだ。違う、地球は反応しているだけだ、怒っているのはあなただ、とおれは思う。
この手の、個人の好悪・感情をより大きなレベルの話にすりかえるやり口をよく見かける。いわゆる「右翼」「左翼」の社会正義の話にもこの手のものが多い。みっともないし、しばしば卑怯だとおれは思う。
もっとも、意外と本人はすりかえをしてしまっていることに気づいていないのかもしれない。おれだって気づかずに同様のみっともないこと、卑怯なことをしでかしているかもしれない。いや、きっとしてるんだろうな。間抜けだもんな。
- 作者: 高橋秀実
- 出版社/メーカー: 新潮社
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