「粋な人」は「いきなひと」とも読めれば、「すいなひと」とも読める。
 せいぜい落語からの知識だが、関東ではほとんど「すいなひと」とは言わないようである。関西では、「いきなひと」もつかわないではないが(関東からの影響かもしれない)、「すいなひと」のほうが多いように思う。繰り返すが、もっぱら落語からの印象なので、日常会話ではどうだか知らない。もしかすると、日常レベルでは死語に近いかもしれない。
「いき」と「すい」の違いはなんだろうか。どちらも、色気の成分を含んでいる。ただ、「いき」のほうがその成分がちょっと少ない印象がある。「いき」のほうが広い意味合い/人となり/行為で使われ、「すい」はもっぱら色街とその周辺で使われる(た)、とまあ、そんな理解でいいのだろうか。
「いきなひと」のほうがやや男っぽさが増し、「すいなひと」はやわらかい。元々は田舎だった関東と、長年、日本の政治・商業・歌舞音曲的な文化の中心であった関西の違いかもしれないような気がするでいいのかな。
 作家でいうと、吉行淳之介は「いき」で、谷崎潤一郎は「すい」という感じがする。もっとも、谷崎潤一郎は東京の生まれだけれども。そして、三島由紀夫(特に後年)は「やぼ」である。