全ては泡盛が悪いのだ。

 昨晩、家で一人酒盛りをやって、調子に乗って泡盛を飲んだら、頭が天動説、足が地動説となってしまった。
 途中で泡盛を入れたグラスをひっくり返し、テーブル上が泡盛の小さな池と化した。幸い、同じテーブル上にあったノートパソコンにはぎりぎりかからなかったので、ラッキー、と思ったら(まあ、ひっくり返した時点でアンラッキーなのだが)、泡盛の池が実はノートパソコンの下まで広がっていて、あわてて掃除した。
 いつのまにか座椅子で寝込んでしまい、3時頃に目が覚めた。そのまま這ってベッドににじり登った。
 朝っぱらからピンポーンと鳴らすやつがいるので、「うっせーなー」と思いながら出てみると、宅配のお兄ちゃんであった。時計を見るともう9時を過ぎていた。何だか、土曜日を少し損した気になった。
 二日酔いはさほどひどくないが、全体に気だるい。洗濯機に服を放り込み、クリーニング屋に行こうと財布を捜したが、ない。イヤな予感がした。洗濯機を止めて、洗剤で濁った水に手を突っ込むと、あった。どうやらズボンのポケットに財布をつっこんだまま洗濯してしまったらしい。樋口一葉が濡れている。
 くそ、と悪態つきながら、パソコンを立ち上げると、キーボードがヘンだった。スペースキーを押すと「/」が入力されたり、デリートキーを押すと音量が上がったりする。どうやら、昨日のこぼした泡盛がノートパソコンに侵入し、キーボードがヨッパラってしまったらしい。
 仕方がないので、昔使っていた外付けキーボードで今、こうやって文章を打っているが、このパソコン、いつまで保つことやら。
 今日はロクなことがない。そういえば、朝から便秘だ。いや、おれが悪いんではない。全ては泡盛が悪いのだ。旨い酒がこの世にあるのがいかんのだ。

――酒が人間をダメにするンじゃあないンです。人間はダメなものだと確認するために酒は存在するンです。 立川談志