よく見る夢

 世に精神分析学の夢分析なるものがあり、夢の話をすると、チンチンのサイズから、幼少の頃に犬の格好をしてボンテージにマスクの女性にムチで三千六百七十三回シバかれたことまでバレてしまうらしいから、本当はうかつに話すのは危険なのだが、他に書くことも思い当たらないので書く。
 おれにはよく見る夢がふたつあって、昨晩、ふたつとも見た。
 ひとつは住む家を探してそこらへんを歩き回る夢である。電車に乗ってあちこちをさまよってアパートやマンションを探す。不動産屋なんかは出てこないで、勝手にいくつかの部屋を見て回る。そしていつのまにか住んでいたりする。たいがいどれもちょっと変わった部屋で、たとえば昨日見たのは、長っぽそい和室がつらなっているが、部屋と部屋の間に襖の類いがなく、要するに大きな和室が柱で区切られているような家であった。障子越しだったか、窓ガラス越しだったか、外の縁側は人の行き来が自由で、「何だかちょっと、覗かれているみたいで恥ずかしいなー」などと思っていた。
 そうして、家のまわりをほっつき歩く。近くの駅から駅までを歩いたり、高低差のある住宅街を歩いたり、自転車で海際を走ったりする。このあたりは大学以来、ずっとアパート、マンション暮らしをしていることが反映しているのかもしれない。しかし、昔に住んだ町を思い出したりすることはまずない。
 もうひとつはおれが学生で、全然勉強していなくて焦る夢だ。
 たいがいは高校生なのだが、昨日はなぜか大学院生という設定になっていた(現実には大学院に行ったことはない)。1学期、2学期と全然授業に出ていなくて、本当にひさしぶりに授業に出た夢だった。おれは全く授業の内容についていけないだろう、そもそもカリキュラム自体がどうなっているのか知らない、と戦々恐々として授業に出る。しかし、先生をはじめ、みんな意外と普通に受け入れてくれて、なぜか途中でビールを買いに行かされた。
 この、学校に行ってなくて焦る、という夢がどこから来ているのか、よくわからない。高校時代は毎日学校に行っていた。ただ、大学受験の2ヶ月ほど前まで、友達とバンドのまねごとをして、受験勉強から逃げていたから、その頃の「ああ、本当はこんなことをしていてはいかんのだがなー」という焦りが、INA48(イナモト48歳)になった今でも残っているのかもしれない。あるいは、大学に入ってからは全く授業について行けず、そのうち、授業に出なくなってしまったから、その頃の「あー、おれってダメだなー、でも、今さら遅れた分を取り返すのも大変だしなー」という記憶が働いているのかもしれない。
 こうやって書いてみると、ダメ人間の焦りの夢か、根無し草がほっつき歩く夢で、どうもこう、全体にやる気というものがまるで欠けている。
 おれのチンチンのサイズ、わかりましたか?