「物は言いよう」と言って、おれのスルドい直感によれば、これは現実世界はひとつであってもそこへの意味付け、価値観との合わせ具合はいろいろということによるのだろう。脳という解釈装置にどういう回路を作るかで見え方というのは変わってくるのだと思う。
ややこしい言い方をしたが、ま、物事の見方、表現の仕方を変えてみると、だまし絵のような面白さを味わえることがあるということだ。
今日は、一般にネガティブに捉えられている人を、物の言いようでポジティブに変換して遊んでみようと思う。
おれが気に入っているのは「存在感のない人」の言い換えである。職場やなんかで「あの人、存在が薄いねえ」「実は座敷わらしなんじゃない?」などと言われる人がいる。もちろん、ネガティブな捉え方、かすかな悪意が混じっている。しかし、こう言い換えれば、ポジティブなイメージが生まれる。
透明感のある人
生まれないか。かすかな悪意だったものがさらなる悪意に変わってしまっただけか。
ま、しかし、地味ィな人に「あの人、透明感があるよね」と陰口たたくのはなかなか皮肉で楽しいように思う。暗い喜びってやつですね。
「人間的に小さい」というのはどうか。もちろん、小さいと言っても、白木みのるのことでもなければ、リトル・フランキーのことでもない。やることなすことがセコい、狭量だ、と言ったような意味である(おれを見るな!)。こう言い換えてみよう。
Think Smallな人
昔、フォルクスワーゲンのビートルのアメリカでの広告に「Think Small.」というキャッチコピーがあって、今でもよくコピーライティングやマーケティングの教科書に載っている。当時(1960年前後)のアメ車の、デカいほうがエラいという価値観に対して、小さいクルマのよさを謳って、ビートルを強烈に印象づけたとされる。「Think Smallな人」。器量・考えが小さいことの価値を問う……自分で書いておいてなんだが、おれは今のところ、特に価値を見いだせない。ただ小さいだけだ。申し訳ない。
「Think」つながりで、「空気を読めない人」はこう言い換えるとどうか。
Think Differentな人
スティーブ・ジョブスのにおいがしますね。ま、実際、「空気を読めない人」が大事な働きをすることもあって、会議が長引くかもしれませんが、我慢しましょうや(ただ会議が長引くだけで終わることも多々あるけれど)。
ずばり、「ダメ人間」はどう言い換えられるだろう。
まわりに優越感を振りまく人
これはなかなかいいのではないか。ダメ人間を見て、「あいつはダメだ」と評するとき、わしらは実は相対的に自分を高みに置いているのである(ただし、あくまで「相対的」であるところが残念だが)。
「優柔不断」。
思考が柔構造
「馬鹿」。
頭の中がトリックスター
「遅刻魔」。
時間感覚イノベーター
「デブ」。
食欲におおらかな人
この手の言い換えで、おれが傑作だと思うのは、カレル・チャペックの「不器用」についての言い換えだ。チャペックによると、「不器用者」とは「魔術師」だという。例えば、不器用者が紐を結ぼうとすると、あら不思議、突如紐が生命を持ち始め、あらぬ方向へと勝手に動き出す。おれも魔術師だからよくわかる。
どうも話が散漫でまとまらないが、今日はこの辺で(なお、話がまとまらないのは、おれが「思考がクリスタルな人」だからである)。