一億総ナンタラ

 おれの嫌いな言い回しに「一億総ナンタラ」というのがある。見たり聞いたりするたびに「そんな雑にくくるなよな。バーカ」と思う。
 試しに、Googleで「一億総」と検索してみよう。出るわ、出るわ。

一億総ツッコミ時代
一億総クリエイター時代
一億総自己ベストの時代
一億総評論家時代
一億総素人化
一億総監視
一億総当事者”社会
一億総疲労社会
一億総ガキ社会
一億総ノマド時代
一億総グルメ
1億総半病人時代
一億総自殺

 ンなわけないじゃん、と思う。
 もしこれらがどれも本当なんなら、ワシら(日本に住んでる人くらいの意味)は全員ツッコミをして、何かをクリエイトして、自己ベストを出して、評論して、素人でヨロコんで、監視されて(監視してか?)、当事者で、疲れて、ガキと化して、移動しながら暮らして、グルメで、半病人で、自殺してしまうことになるではないか。
 おれが「一億総ナンタラ」という言い方が嫌いなのは、おそらくおれが個人主義者で――というのはカッコつけた言い方で、本当のことを言うと、ひどく自我と自意識が強いイヤな野郎だからで――おれのことを知りもしないヤツに勝手に一括りにされるのがヤでしょうがないからなんだが、それはまあ、置いておく。
一億総ナンタラ」という言い方をする人は、たいがいが考えが浅いか、意図的に人の注意を惹こうとしているのであろう。そういう意味では、浅はかな人か、確信犯的な嘘つきなんだろうと思う。
 言い出すほうはまだいい。思考が粗雑か、意図的に議論をどこかに誘導しようとしているのだろう。むしろ、問題は受け手で、こうした言い方を取り上げてヨロコぶ人というのは、やはり考えが粗く、薄っぺらいと思う。だって、一億みな同じ、なんてわけがないじゃないですか。
 まあ、おれに言わせれば、日本というのは以前から、一億総睡眠社会で、一億総食事社会で、一億総排泄社会で、今や一億ほぼ総洋装時代なんですけどね。