自民党のキャッチコピー

 安倍さんが党首になってから自民党はポスターなどで「日本を、取り戻す。」というコピーを使っていた。日本の何を取り戻すんだか書いてなくて、経済を取り戻すのかもしれないし、古き良き日本(本当にそんなものあったのかは怪しいが)を取り戻すのかもしれない。あるいは、単に自民党が権力を奪取するというだけのことと取れないこともない。曖昧にしておきながら読む人に勝手に想像させるという仕掛けで、宿命的に短くせざるを得ないキャッチコピーではよく使われる手法である。ついでに言うと、「日本を」と「取り戻す」の間に「、」が打ってある。息を切るようなためを作って、言葉を印象づけるテクニックである。おれはちょっとあざとく感じるが、まあ、効果はあるだろう。
 参院選の前頃からは、経済政策の好調もあってか、「日本が、動き始めた。」というコピーを使うようになった。これまた何が動き始めたのか、どういう方向に動き始めたかは書いていない。もしかしたら、

日本が、右方向に動き始めた。

 かもしれず、

日本が、後ろ向きに動き始めた。

 かもしれないではないか。ちょっと皮肉にすぎるかな。しかしまあ、安倍さん肝いりの自民党の浅い改憲案を見ると、そんなふうにも思うのである。
 あるいは、

日本が、ムダに動き始めた。

 というケースだってある。
 ともあれ、日本の政治というか、民意とやらいうやつは(他の国の政治をよく知ってるわけではないけれど)ムードに流れる傾きがあり、そういう危うさをうまく利用しているキャッチコピーだとは思う。