高慢塔

 自転車でよく通る大通り沿いに大型マンションが建設中で、工事用の囲いにはマンション名が「プラウドタワー○○」と書いてある(○○は地名)。
 毎度ながらこの手の名前は英語として大丈夫なのかと思う。なんせ「proud tower」である。おそらく、「誇るに足るタワー(マンション)」とでも言いたいのだろうが、英語ネイティブの人からすると「見事なタワー」とか「高慢塔」という意味に取られてしまうのではないか。
 例えば、イギリス人かアメリカ人がこのマンションに住んで、故郷の人に手紙を送るとする。住所には「Proud Tower 1003」などと書かざるを得ないだろうが、書きながらどんなふうに感じるのだろう。あるいは、受け取った人はどう思うんだろう。日本人が外国でなぜか日本語の名前をつけられたマンションに住み、手紙に「見事なタワー1003号室」と書くようなものなんじゃないか。
 まあ、ここらへんのニュアンスは英語ネイティブの人に聞いてみないとわからんけど。
 以前に住んでいたところの近所には「ルネッサンス日吉」という木造アパートがあった。日本語に直すなら「復活日吉」とか「日吉再生」とか、そういう意味になってしまうんではないか。あるいは、あのヨーロッパの一大文化運動の時代を指すんだとしたら、「文明開化日吉」とか、そんなふうな語感に近いかもしれない。
 な〜にがグローバル時代だ。洋物に見せかけて、実は内輪の言葉感覚でヨロコんでいるだけではないか。
 とか言いながら、おれが今住んでいるマンションの名前には「パレス(宮殿)」という言葉が入っている。これも気恥ずかしい。もっとも、おれの部屋は宮殿は宮殿でも、その一隅の下男部屋みたいなものだけど。