世の金次郎化

 自転車に乗っていて危ないことのひとつに、スマートホンを見ながら歩いている人というのがある。注意深く避けるようにしているのだが、何しろ敵はまわりが見えていないから怖い。何ヲソンナニ夢中ニナッテイルノデアロウカ、といつも不思議に思う。
 似たような形に、漫画を読みながら歩く人というのがあって、たいがいは小中学生なのだが、たまに成人もいる。まわりの評価はたいてい「馬鹿」であろう。しからば、スマートホンを見ながら歩いている人も同じふうに評価されてもおかしくない。
 しかし、考えてみれば二宮金次郎だって同じような形をしていたわけで、馬鹿と金次郎を隔てるポイントは何なのだろうか。薪をしょっているかどうかだろうか。もし二宮先生が今の時代に生きていたら、やはり薪をしょってスマートホンに夢中になるのか――それもやはり馬鹿に見えそうではある。