来世で何に生まれるか

 輪廻転生方面というのは考え出すとなかなかに興味深い。
 おれは来世、生まれ変わるならイソギンチャクがいいと考えていた。何しろ海底でゆらゆら揺れていたら餌のほうから勝手にやってくるんだから楽チンである。見た目もなかなかに優雅だ。一応は食用にする地域もあるらしいのだが、ナマコやホヤほど出回っていないようだから、人間が天敵というほどでもないらしい。暇なときにはクマノミなんかと戯れていたらいいのだからのんきな身分である――と思っていたのだが、そういいことばかりはないようで、実はイソギンチャクはヒトデが天敵なんだそうだ。何しろ逃げることができないのだから(文字通り)致命的である。どんな心持ちなのだろう、すり寄ってくるヒトデにゆっくりと食われるというのは。
 輪廻転生についてはよくわからないところもいろいろある。
 前世での行いが次の生まれに反映され、前世で善行を積めば来世でランクアップ、悪行を行えばランクダウン、という仕組みだという説もある。しかし、例えば、ネズミに生まれたら、何が善行で何が悪行なのだろうか。「ネズミらしく」生きるのが善行なのか。しかし、ネズミらしく生きていないネズミなんているのだろうか。どうもネズミに生まれるとランクアップもランクダウンも難しそうである。
 また、生まれ変わるとして、どの程度までが生まれ変わりの範囲なのかもよくわからない。ほ乳類までなのか、動物までなのか、植物も含まれるのか、黄色ブドウ球菌に生まれ変わる、なんてこともあるのだろうか。黄色ブドウ球菌に生まれたら、あっという間に分裂して、死滅して、善行を積む間もなさそうである。
 こういうことをつらつらと考えてみるのは楽しい。答が出ないからこそ想像をふくらませることができる。ま、結局のところは逝けばわかるさ、なのだけどね。