ロック魂

 ロック魂、なんていうと、今では洒落や冗談のニュアンスなしではなかなか語れなさそうだけれども、いやいやそんなことはない。このムービーをご覧いただきたい。平民新聞さんのところからである。

 いやはや凄い。おれは凄いものを見ると、笑ってしまう癖があるのだが、こいつは大笑いした。ハウリン・ウルフみたいである。ガットギターにスチール弦を張っているところも何だかわからんがカッコよい。黄色いスーパーの袋が泣かせる(お代はこちらということだろう)。
 どこの国の、どんな人生を歩んできた人なんだろうか。ムービーのタイトルを見ると、どうやらロシアかロシア近くの国の人であるらしいが、わからない。ムービーの終わりのほうにはロシア民謡のようなフレーズも出てくるし、後ろに座っている物売りのおばさんは何となくロシア風である。想像するに、若い頃は旧ソ連あたりでロックバンドをやっていたが、食い詰めて今ではホームレス、それでも荒ぶるロック魂といささかの伝統芸能的熟練によって日々のパン代を稼いでいる、ということなのではないか。知らんけど。
 おれは時々、「新しい」ということについて考えるのだが、どうやら、日本語の「新しい」にはふたつの意味があるのではないか。「これまでになかった」という属性と、「新鮮」という意味である。盲目的に「新しい」ということを売り文句にしたり、「これまでになかった」というだけで飛びついたりするのは物を考えていない感じがするが(広告宣伝文化のマジックに絡め取られているようでもある)、一方で、このギター弾きのオッサンにとっては自分の弾き出す音、だみ声の歌が日々新しいのではないか。ふつふつふつと心が沸き立っているのである。きっと、おそらく、知らんけど。