ジャパネスクと中国絵画

 日本の浮世絵が19世紀のヨーロッパの印象派に影響を与えたということを、鼻高々に語る人が時々いる。自分が描いたわけでもあるまいに、と意地の悪いおれは少々斜めから見てしまう。
 確かに、西洋画の系統とは全然別の系統の絵を見て、「おお、絵はこんな描き方もあるんだ」と当時の西洋の若い画家達は驚いたのだろう。ゴッホには浮世絵をまねた絵があるし、ゴーギャンにも日本趣味の部屋を描いた絵がある。もう少しさかのぼって、印象派の始まりくらいの頃、「絵は写実である必要はない」という発見には、日本の絵も影響したのだろう。
 しかしまあ、一部の人士の鼻高々の態度にはちょっと鼻を鳴らしてしまう。日本の浮世絵が印象派に与えた影響を自慢するなら、長年にわたって日本の絵画が学び、モチーフを得、真似てきた中国絵画の日本への影響も同様にリスペクトしたらどうかと思う。それが態度の一貫性というものだろう。