ダメダメPowerPoint

 企画系の仕事をしている人には、PowerPointを使う人も結構多いんじゃないかと思う。

 PowerPointにはクリップアートなるものがあって、スライドに簡単に絵を入れられるようになっている。こんなようなものだ。

 使っている企画書をたまに見ることがあるのだが、やめたほうがよいと思う。プレゼンテーションを楽しくとか、ちょっとした息抜きに、という考えなのかもしれないが、見ている側は「あなた、この程度でしょ」と馬鹿にされている気になる――とまでは思わないが、使っている人のセンスを少々気の毒に感じることはある。伝える内容の実質がよいならプレゼンテーションは充実したものになるはずだし、充実したプレゼンテーションなら息抜きもいらないはずである。

 グラフ機能もあって、たとえば、こんな立体化したグラフを企画書に使う人がいる。

 PowerPointに限らないのだが、データ量とは無関係なグラフの立体化は絶対にやめたほうがよい。データを読み取る邪魔になるだけでなく、データ量を正確につかめないうえ(下のほうのグラフでデータ量を正しく言い当てられる人がどれだけいるだろう)、誤って読み取らせることもある。棒グラフや折れ線グラフを立体化することによって伝わる有意義な情報というのはない。伝わるのはもっぱら「これを作った人は結構暇でした」「PowerPointで遊ぶのはなかなか楽しかったです」「この人はデータを伝えるということをまじめに考えていません」という情報である。立体化によってインパクトを与えられると考える人もいるかもしれないが、それは間違ったインパクトであって、少なくともおれが感じるのは「この人はこういうことを喜んでいる人なんだなあ」というインパクトだ。立体化しないと間が持たないグラフだとしたら、それは元々間の持たない内容なのだろう。つまり、見る人にとってさほど意味のないグラフということなのだと思う。

 情報デザインの大先生エドワード・タフティも「Beautiful Evidence」に書いているが、PowerPointは1枚のスライドに盛り込める内容が少なく、

内容が貧弱→クリップアートやグラフの立体化で間を持たせようとする→ますます伝わるものが貧弱に

という悪循環になりがちである。

 企画書にどんなクリップアートを使うか迷ったり、グラフを立体化している時間があったら、その時間を企画の内容の向上に使うか、あるいはさっさと家に帰ってよく眠ったほうがずっとよいと思う。

Beautiful Evidence

Beautiful Evidence