チャレンジングなオレ

 おれはこれでもなかなかチャレンジングな一面を持っていて、ガキの頃からそうであった。

 よく、側溝のふち、ぎりぎりのところ(コンクリートが一定の幅で白っぽくなっているところがるでしょう。あそこ)を横にはみ出ないように歩こうとして、ドブに落っこちたりしていた。 50mくらいある坂道を自転車で全速力で駆け下るという、今で言うMTBダウンヒルの草分けみたいな遊びもやっていて(MTBではなく子供用自転車だったが)、そこは坂を下りきった先が交差点になっていたので坂道+クルマという二重の意味でスリリングであった。

 国道の中央分離帯を自転車で乗り越えられるかチャレンジしてみたこともある。クルマの来ない瞬間を見計らって中央分離帯に突撃したのだが、見事にはね飛ばされ、道路に転がされた。空の青さがスローモーションで見えたのを覚えている。そこにクルマが走り込んでいたら一発で即死だったろう。あ、即死はたいてい一発か。

 何と呼ぶのかわからないが、乾電池で上にプラスとマイナスの電極が両方ついているやつがあるでしょう。あれを舌に押し当てたら舌に電流が流れるのだろうかと実験してみたこともある。舌に当てた瞬間、ジュッと音がして、ギャッと叫んだ。あれはやってはいけない。ただしこういうことには上がいるもので、おれの友達は針金をU字型に折り曲げてコンセントに差し込んでみたことがあるという。スパークが飛んで、家が真っ暗になったそうだ。人間はなぜああいうことをやりたがるのだろうか。馬鹿だからか。

 夏、あまりに暑いので、ひんやり冷やせるだろうと、アイスキューブを作る製氷機を冷凍庫から出して、舌に押し当ててみたこともある。たちまちのうちに舌先が凍りつき、はがそうとしてもはがれなくなった。「あげがごげげげ」と言いながら力任せに取ろうとしたら血が出てきた。どうなることかとパニックになった。しかし、天啓というのか、親が氷を製氷機から取り出すとき水で冷やしているのを思い出し、舌に製氷機を貼り付けたまま、水道の蛇口に向かった。ジャーと水を出して製氷機と舌の間に当てると、人間の知恵というのは大したものだ、見事にはがすことができた。二度とやるものかと心に誓った。まあ、二度やる馬鹿はいないと思うが。

 チャレンジングであることは素晴らしいことのようによく言われる。しかし、時と場合と人によると思うのだ。馬鹿がチャレンジングであるというのはいささか問題である。