社名・人名の大文字表記

 Lang-8というSNSで外国人とやりとりをしている。

 昨日、「頭文字は別として、日本企業が英文で社名をすべて大文字表記することをどう感じる?」と訊いてみた。たとえば、「Sony is 〜」ではなく、「SONY is 〜」とするような書き方だ。

 これがなかなか評判が悪い。「奇妙だ(strange)」「変てこだ(weird)」「無知・無教養に見える」「キーボードに慣れていないのではないかと思う」、等々。ボロカスと言ってもよい。

 大文字と小文字が混じる通常の英文の中である言葉を大文字にすると、その言葉を強調しているように見えるそうだ。太字や下線に似た効果かもしれない。まあ、たとえば、日本語の文章で、「ソニーは〜です。だから、ソニーは〜と考えます。〜だから、ソニーは〜しました。」と書いたら、うるさいし、いちいちそんなに自社名を強調するなよな、と思うだろう。社名を大文字表記するのも同じ効果を与えてしまうのかもしれない(頭文字は別である)。

 大文字で書くと叫んでいるように見える、という意見もあった。再び日本語の例にすると、「ソニー!は〜です。だから、ソニー!は〜と考えます。〜だから、ソニー!は〜しました。」みたいなふうに見えるのかもしれない。アメリカの広告によく全文を大文字にしているケースを見かけるが、あれは商品の売り口上を述べ立てるような感じなのだろうか。

 社名だけを大文字にしている文を見ると、「日本の会社なんだろうなあ」と思うという人もいた。あー、またやっちゃってるよー、みたいに感じるらしい。

 そもそも、大文字は尊大な感じを与えるようだ。キリスト教の神を"god"ではなく、"God"と書くことも関係しているのだろうか。最近は私を意味する"I"を"i"と小文字で書く例もよく見かけるが、関係ありそうだ。[追記:単なるタイプミスか、ちゃっとなどで急いで書いているケースがほとんどだそうです]

 日本企業が英文で社名を大文字表記にしたがるのは、おそらく自分が見慣れているロゴの印象を普通の英文にも持ち込もうとするからだろう。日本で仕事しているアメリカ人のコピーライターが以前、「『英文で企業名を大文字表記するのはおかしい』といくら説得しても納得してくれない」とこぼしていた。自分が大文字表記を見慣れているからといって、言葉の受け取り手である英語ネイティブの人の感覚を無視して大文字表記で押し切るというのは、随分と内向きな話だと思う。担当者は相手にどう伝わるかということよりも、社内からの文句のほうが怖いのかもしれない。

 なお、ロゴで社名を大文字表記すること自体は別に問題ないそうだ。それから、ソニーが英文で大文字表記しているわけではないので、念のため。

 また、日本人が英文で姓名を記すとき、たとえば、INAMOTO Yoshinori というように、姓だけを大文字表記するのもおかしいそうだ。この習慣はいつどういうふうに始まったのだろう。たぶん、英文で日本の姓名の順をどちらにするかが紛らわしいことから始まったんだろうと思うが。