もし人生幸朗先生ありせば

 例によって「てめえ何様だ」と訊かれれば「おれ様だ」と言うほかないことを書くんだが、今日は夏至で、キャンドルナイトというものが行われるそうだ。夜の8時から10時まで電気を消して蝋燭つけてお話ししましょう、とかなんとか。それが「スロー」なんだそうである。

 まあ、あくまでおれの好き嫌いなんだが、どうもファンシーのにおいがしてよろしくない。クリスマスナイト、ホーリーナイト、サンタさん、トナカイさん、行き着く先はディズニー的ドリーミー世界だろうか。シッシッ、寄るな寄るな、と思う。

 まんまとノセられている感じがするのもどうもなあ、である。

 個人の好き嫌いからもう少し足を伸ばすと、たぶん、電気を消すというのは地球環境方面の話もあってのことなんだろうが、蝋燭の出す二酸化炭素と原材料やら製作工程やら輸送過程やらを含めたら、電気使うのと蝋燭点すのと、どっちの環境負荷が高いんだろうか。ま、そういう実際的な効果というより、「電気を消すことで“エコ”に対する意識を高めることが重要」とかなんとかそういうリクツなんだろうけど。おれだって結構長い間生きているから、そのくらいのリクツは想像つくぜ。

 こういうとき、人生幸朗先生が生きていらっしゃったらどうおっしゃったろうか、と思うのである。

「何ですか、あのキャンドルナイトっちゅうのは」
「ぼつぼつボヤキに入ってきましたでぇ!」(幸子夫人)
「『電気消して、スローな夜を』やて。蝋燭つけて話しせいて。電気消したら、さっさと寝てまわんかい!」

 ああ、人生幸朗先生。あなたが亡くなって、この日本から「素になってみること」「正しくおもしろい距離の取り方」というものが失われたように思えてなりません。

 次のは、人生幸朗先生のビデオ。珍しく東京に来たからか(当時は関西の芸人が東京に来ることは今ほどなかったようだ)、素晴らしい高揚感がただよっている。観客の反応もいい。

 カアちゃん、カンニン! ゴメンチャイ! ナンチャッテ!