イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ

 昨日、YouTubeイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのビデオを見ていたら、止まらなくなってしまった。

 イアン・デューリーは70年代のパンクロック・ブームの頃に出てきたイギリスのオッサンである。まずはこのビデオをご覧いただきたい。

 ブロックヘッズの演奏も含めて、カッチョよすぎる。1977年の演奏だそうだ。途中でブロックヘッズのメンバーの入れるスキャットが粋だ。こういうところがセンスだと思う。

 イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズをおれが知ったのは、忌野清志郎がロンドンで「レザーシャープ」を作ったときで、そのとき清志郎が起用したのがブロックヘッズだった。何とまあイカしたバンドだろう、と、それからイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズを聞くようになった。それまでイアン・デューリーは名前しか知らなかった。

 イアン・デューリーがデビューしたのは35歳のときで、当時もうすでにいいオッサンだったわけだ。子供の頃に小児麻痺をわずらって、確か、左半身がほとんど利かないのだったと思う。障害のせいで学校では随分といじめられたとか。障害も含めてその人の個性である、という言葉があって、あんまり安直に使ってはいけない言葉と思うが、イアン・デューリーについてはその通りだと思う。彼の声の持つパワーは、彼の送ってきた人生と切り離せないものなんだろうとおれは感じる。

 イアン・デューリーは別に歌の上手い人ではない。声は低くて美声ではなく、滑らかでもハスキーでもよく通るわけでもない。なんだかモコモコした声だ。音程も結構ズレるが、そんなこと本人は気にしていない。それもこれも含めてイアン・デューリーなんだろう。

 もう一本。

 イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのもうひとつの魅力は、ブロックヘッズの高度な演奏能力だ。いわゆるファンク・ロック系のリズム感で、ビートは強固(ベースとドラムは本当に素晴らしい)、ディテールは粋である。どういう経緯で集まったのか知らないが、腕っこきのメンバー達だ。同時代のパンク・ロックは、別におれらでもできるぜ技術なんか関係ないぜガシャガシャガシャと下手くそにかき鳴らすところから始まったんだと思うが、ブロックヘッズはその点、立ち位置が全然違う。圧倒的に「プロ」である。サルサはやっぱり上手いバンドがいいのと同じで、この狂熱的な音楽の盛り上がりはブロックヘッズの演奏技術とセンスがあってのものだ。よくまあ、イアン・デューリーと結びついたものだと思う。

 YouTubeを見ていたら、小林克也イアン・デューリーにインタビューしてるビデオがあった。

 別に何か特別なことを言っているわけではないのに強く印象に残る。こういうのを人間力というのかもしれない。ラブリーな人だ。できれば、いきつけの飲み屋にいつもこういう人にいてもらいたい。

 イアン・デューリーは2000年に56歳で亡くなった。次のビデオは2009年のブロックヘッズの演奏。イカしたグルーブ感は変わらない。