引越し

 先週末、京都に引っ越した。

 住んでいた横浜市の日吉には、社会人二年目からだからちょうど二十年住んでいたことになる。生まれ育った富山市が高校生までなので、気づけば日吉は人生で一番長く住んでいた土地ということになる。

 穏やかで買い物なども手ごろな街で、少し騒がしくなるといえば、慶応大学の入試の時期から新入生が歓迎コンパで駅前にゲロを吐き、そこここに倒れ伏す4月くらいまでだろうか(あれは本当にみっともない)。学生も授業をサボる要領を覚えてくるのか、5月、6月とだんだん学生の数が減っていき、夏休み前後には普段の穏やかな街に戻る。元々が丘陵地帯を宅地造成したところで、少し歩けば緑も多い。地形が複雑なので、散歩するのが楽しい土地でもあった。

 京都に向かう新幹線が発車したときには、さすがに少し涙が出た。というのは嘘で、どうもあまり土地に対する深い思い入れというものが育たない体質らしい。しかし、まあ、よい街ではあった。

 新しく住むのは、京都の東山近くのやはり丘の上で、つづら折になった坂を上ってたどり着く。上りきった頃には息が切れ、腿の前側にたっぷり乳酸がたまる。しかし、やはり土地が起伏に富み、散歩が楽しそうである。

 マンションの窓を開けると、京都市街を見下ろせ、その向こうに西山が連なっている。朝方などは西山を霧が覆い、嵐山あたりの谷間に霧がたまって、よい景色である。