レスラー

レスラー スペシャル・エディション [DVD]

レスラー スペシャル・エディション [DVD]

 プロレス界のかつてのスーパースターも今は落ち目。平日はスーパーでアルバイトして週末だけローカルなプロレスのリングにあがっている。妻とはとうの昔に別れ、一人娘とは絶縁状態。楽しみといえば、ストリップバーに行くことのみ。ある日、心臓麻痺に襲われるが、ひさびさのビッグイベントに招かれ、覚悟のうえで決戦に臨む・・・。

 とまあ、そういうストーリーの映画。主演はミッキー・ローク。かつての二枚目俳優も今では加齢臭ただようオッサンと化し、主人公の哀歓と重なる。

 映像は粒子が粗く、手持ちカメラを多用し、BGMも抑え目で、ドキュメンタリー映画のタッチに近い。それがまたスーパースターのその後、というテーマによく合っている。

 レスラー達の控え室のシーンがよい。対戦するふたりがどういう段取りで試合を進めるかを話し合う。ふたりともプロの目つきだ。プロレスは八百長だからどうの、といちゃもんをつける人が今、どの程度いるのかは知らないが、これを見るとそういう言い草は野暮というより、ナンセンスのように思う。「ロミオとジュリエット」の結末に、「あれはヤラセだ、嘘っこだ。本当は死んでいないじゃないか」と文句をつける人がいるだろうか?

 主人公は落ち目ではあっても控え室では他のレスラー達から尊敬されており、主人公もこれからの若手に温かい声をかける。レスラー達、みんなやさしいのだ。

 人生ガンガン上り坂という人にはあまりおすすめしない。「なんかなあ、この頃思っていたのとだいぶ違うようだなあ」と感じている人には琴線に触れる部分があるんではないか。別に傷をなめあったっていいじゃないか。