恥の二重体験

 どういう具合なのか、過去の恥ずかしい記憶がふとよみがえることがある。街を歩いていて、突然昔の死ぬほど恥ずかしい記憶がよみがえり、「うひょえええ」と奇声を発し、うずくまりそうになったりする。その行為がまわりの人に対してまた恥ずかしく、恥のダブルパンチを食らう。

 たとえばどういう恥ずかしい記憶かというと……あまりに恥ずかしくて書けない。今、「いやん」と身をくねらせながらこの文章を書いている。

 恥の多い生涯を送ってきました。

 ひとつ気になることがあるのだが、人間、死ぬ間際に人生が走馬灯のように繰り返されると聞く。ということは、過去の恥ずかしい記憶もまたその全てがよみがえるのだろうか。わたしのような恥の多い人間にはほとんど拷問である。

 いつのことか知らないが、わたしが死ぬときには「うひょえええ」と奇声を発するかもしれない。そのときたまたままわりにいる方は、「ああ、この人は今、過去の恥ずかしい体験を走馬灯のように繰り返しているのだなあ」と了解していただきたい。