論説をちょっとだけ楽しくする方法

 言葉には、付けただけでたちまち全体の様相を変えてしまうものがある。例えば、「ちびっこ」というのがそうで、ダービーもノーベル賞裁判員制度も、「ちびっこ」を付けただけで「日本ちびっこダービー」、「ちびっこノーベル平和賞」、「ちびっこ裁判員制度」とあっというまに腰砕けになる。

 今日ご紹介したいのは一見地味な語尾「のだ」である。これを文の最後に入れるとあら不思議。真面目な文章がたちまちバカっぽくなるのだ。

 試しに、今日の新聞各紙の社説でやってみよう。「のだ」の他に適宜「なのだ」も使う。

 まずは日経新聞

 鉱工業生産など生産活動の指標には持ち直しの兆しが見えるものの、雇用情勢は厳しさを増しているのだ
 4月の有効求人倍率は、アジア通貨危機不良債権問題で雇用が落ち込んだ10年前の過去最低水準に並んだのだ。同月の完全失業率は5年5カ月ぶりに5%台に乗せたのだ非正規社員の雇い止めなどから始まった雇用調整は正規社員に及び、新規採用を抑える動きも広がっているのだ

 朝日新聞

 市販の大衆薬の副作用の危険度に応じた新しい販売ルールが、今日から実施されるのだ
 焦点となっていたインターネットや電話、郵便による通信販売規制をめぐる対立が解けぬまま、販売業者から「規制は行き過ぎ。厚生労働省の暴走だ」と裁判まで起こされる中でのスタートなのだ。混乱を残したままの見切り発車になってしまったことは残念なのだ

 読売新聞。

 ソマリア沖の海賊対策が新たな段階に入るのだ
 海上自衛隊のP3C哨戒機2機がジブチに派遣されたのだ。6月上旬にも、アデン湾での護衛艦2隻による日本関係船舶の警護活動と連動して、上空からの警戒監視飛行を開始する予定なのだ
 護衛艦の活動は3月末に始まったのだ。ただ、実際に警護した船舶は1回平均3隻強で、現地を航行する日本関係船舶全体の4分の1以下にとどまっているのだ

 毎日新聞

 政府が今年末に改定する「防衛計画の大綱」に向けて自民党国防部会の小委員会が基本了承した提言に、巡航ミサイルなど「敵基地攻撃能力」の保有が盛り込まれたのだ北朝鮮の弾道ミサイル発射により党内で盛り上がった議論を反映したものなのだ
 攻撃兵器の保有は、憲法9条を根拠にした国防戦略である専守防衛のあり方にかかわるほか、近隣諸国との外交や東アジアの安全保障情勢への影響、さらにこれが危機への現実的対応であるかどうかなど検討課題は多いのだ。冷静な対応が必要であるのだ

 こうした「のだ」の語感は、バカボンパパの影響であろう。「天才バカボン」一作で、日本語における「のだ」の語感をすっかり塗り替えてしまったのだから、言うまでもないが、赤塚不二夫の偉大さはどれだけ称揚しても称揚しすぎということはない。

<追記> 今日のブログ、右下の「剣道時代」さんから「このブログはよく鍛錬されています」と褒めていただきました。なんか、うれしいッス。